ゲラダヒヒの高地順応に関する最初の分子的手がかりを発見:低酸素症の研究や治療に変革的な影響を与える可能性

ゲラダヒヒの高地順応に関する最初の分子的手がかりを発見:低酸素症の研究や治療に変革的な影響を与える可能性

エチオピア高原の高山草原には、胸が真っ赤なことから「ブリーディング・ハート」と呼ばれるゲラダヒヒという霊長類が生息している。ゲラダヒヒは、絶滅した親類よりも長生きして、変わった生活様式を身につけた最後の一種である。森林やサバンナに生息するサルとは異なり、高地で草を食べながら生活している。一般的にゲラダヒヒは登山に長けており、群れを成して朝には崖にしがみつき、一日中座って草を食べるのに最適なクッションのようなお尻で休んでいる。ヒヒの仲間とは異なり、海抜1800〜4300メートルの高原の薄い空気の中で繁栄するために、彼らがユニークに適応しているのは何だろうか?そして、これらの特徴がヒトにも適応できる可能性はあるのだろうか?
2022年3月24日、Nature Ecology and Evolution誌のオンライン版に掲載されたこの研究は、30 以上の機関による大規模な国際的取り組みと、アフリカ野生生物基金、エチオピア野生生物保護局(EWCA)、全米科学財団、全米衛生研究所、サンディエゴ動物園、ワシントン大学ロイヤリティ研究基金、ドイツ研究財団の寛大な許可と支援によって実現した。この論文は「ゲラダにおける高地順応と染色体多型に関するゲノム上のシグネチャー(Genomic Signatures of High-Altitude Adaptation and Chromosomal Polymorphism in Geladas)」と題されている。

「高地での生活は非常に困難だ。空気はより冷たく、酸素の含有量も少なくなっている。我々のチームは、このような極限環境で生活するゲラダを10年以上研究してきたので、高所で長期間にわたって生活することがいかに困難であるかということを、直接的に理解している。しかし、ゲラダヒヒはもっと長い間生存しており、その厳しい環境に適応するために、一体どのように生態を変化させたのか不思議に思っている。」とアリゾナ州立大学生命科学部のノア・スナイダー・マックラー教授は述べている。

ゲラダヒヒのゲノム塩基配列を決定
スナイダー・マックラー博士とケネス・チョウ博士(博士研究員)は、高地順応の分子的な手がかりを探るため、チームを率いてまずゲラダヒヒのゲノムをアッセンブルし、配列を決定した。
「我々は、ゲラダヒヒの高地適応の研究に興味を持った。ゲラダヒヒは人類とは異なり、何十万年もの間、高地に住み続けており、霊長類が深い時の中で極限環境にどう対処しているかを知る機会を与えてくれるからだ。ゲラダヒヒは我々と近縁で、その生態の多くを共有しているので、ゲラダヒヒについてもっと知ることで、高山病や脳や肺の危険な腫れなど、高地に関連する病気や障害の治療に役立つかもしれない」と、同僚とともに大陸を駆け巡り、この研究のリーダーとして貢献したチョウ博士は語っている。
彼らは、エチオピアのシミエン山脈に生息する野生のゲラダヒヒ(雌の成体)1頭から集めたゲラダヒヒのリファレンスゲノムを初めて作成し、野生のゲラダヒヒから集めたデータを詳細に調査して、高所環境に適応しているかどうかを見極めた。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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