遺伝子治療で犬の先天性夜盲症を改善。ヒトの夜盲症への応用を目指す。

遺伝子治療で犬の先天性夜盲症を改善。ヒトの夜盲症への応用を目指す。

ペンシルバニア大学の研究者らは、先天性夜盲症の犬に薄明かりの視力を回復させる遺伝子治療を開発し、人における同様の症状に対する治療に希望をもたらした。先天性定常性夜盲症(CSNB)の人は、薄暗い場所で物を見分けることができない。この障害は、特に人工照明がない場所や夜間の運転時に課題となる。2015年、ペンシルベニア大学獣医学部の研究者らは、犬が人の症状と強い類似性を持つ遺伝性夜盲症を発症する可能性があることを知った。2019年、研究チームは原因となる遺伝子を特定。2022年3月22日、ペンシルベニア大学のチームと同僚らは、CSNBを持って生まれた犬に夜間視力を戻す遺伝子療法という大きな前進を雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』で報告した。これは、網膜の奥にある「ON双極細胞」と呼ばれる細胞群を標的としたアプローチで、この疾患やON双極細胞の機能が関与する他の視覚障害に対する犬や人の治療法開発の目標に向けた重要な一歩となる。このオープンアクセス論文は「AAV遺伝子療法によるON双極細胞の標的化( Targeting ON-Bipolar Cells by AAV Gene Therapy Stably Reverses LRIT3-Congenital Stationary Night Blindness )」と題されている。

遺伝子治療を受けたCSNBの犬は、網膜に健康なLRIT3タンパク質が発現するようになり、薄暗い場所でも迷路を上手に進むことができるようになったのだ。また、この治療法は持続性があり、治療効果は1年以上続くとされている。
「このパイロット試験の結果は非常に有望だ。先天性静止型夜盲症の人や犬では、生涯を通じて病気の重症度が一定で変化しない。これらの犬を1歳から3歳の成犬を治療することができた。つまり、理論的には大人になってからでも夜間視力の改善が見られる可能性があるため、今回の発見は人の患者集団にとっても有望であり、関連性が高いと言えるだろう。」と本研究の主執筆者でペンシルベニア大学獣医学科の宮寺恵子助教授(写真)は言う。

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Edited by Michael D. O'Neill

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