腸内における自然免疫記憶を発達させる仕組みが解明される
サイエンス出版部 発行書籍
自然免疫系は、宿主と微生物の相互作用を制御し、特に粘膜に侵入した病原体に対する防御に重要な役割を担っている。今回、パスツール研究所とInserm (フランス国立衛生医学研究所)の研究者らは、腸管感染モデルを用いて、自然免疫系エフェクター細胞-グループ3自然免疫系リンパ球が感染の初期段階で作用するだけでなく、再感染時に宿主を保護する自然免疫記憶を発達させるよう訓練できることを明らかにした。この研究は、2022年2月24日のScience誌に掲載された。この論文は「訓練されたILC3応答が腸管防御を促進する(Trained ILC3 responses promote intestinal defense)」と題されている。 腸の病気や消化管出血の原因となる大腸菌感染症対策は、公衆衛生上の大きな課題だ。飲料水や食品中に存在するこれらの細菌は、急性腸炎に伴う持続的な下痢を引き起こすことがある。その結果、腸管病原性大腸菌および腸管出血性大腸菌は、世界の小児死亡原因の約9%を占めている。 腸粘膜は、正常な身体機能に不可欠な常在細菌叢に対する耐性を維持しながら、病原体の感染に対抗するための複雑な防御システムを保有している。この常時監視を行うのが自然免疫系であり、感染後数時間のうちに初期防御を行う。次に、適応免疫系は、BおよびTリンパ球の表面に発現する特異的受容体を活性化することにより、遭遇した病原体に対する記憶を形成し、それによって防御抗体および炎症性サイトカインの産生を可能にする。長期的な耐性と防御における適応免疫系の機能が明確に確立されているのとは異なり、免疫記憶における自然免疫系の役割はいまだ解明されていない。 2008年にInsermの科学者ジェームズ・ディ・サント博士率いるチーム(パスツール研究所/Insermの自然免疫ユニット)は、適応型Tリンパ球やBリンパ球とは異な
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