ナノ粒子と阻害剤が免疫系を刺激し、脳腫瘍を克服。血液脳関門を通過し、腫瘍の免疫反応に対するシールドを破壊。
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ミシガン大学ローゲル癌センターの科学者らは、脳腫瘍の重要な経路を阻害する低分子を発見した際は楽観的だった。しかし、阻害剤を血流にのせて脳に送り込み、腫瘍に到達させるにはどうしたらよいかという問題が立ちはだかった。そこで、複数の研究室と共同で、阻害剤を封入したナノ粒子を作製したところ、予想以上の成果が得られた。このナノ粒子は、マウスモデルの腫瘍に阻害剤を送達し、免疫系をオンにして癌を消滅させることに成功しただけでなく、このプロセスが免疫記憶を誘発し、再導入された腫瘍も消滅させたのである。
「誰もこの分子を脳に入れることができなかった。これは本当に大きなマイルストーンだ。」と、ミシガン大学医学部のR.C. Schneider Collegiate Professor of Neurosurgeryであるマリア・G・カストロ博士は述べている。カストロ博士は、ACS Nano誌に掲載されたこの研究の主執筆者だ。
「多くの癌種で生存率が向上しているにもかかわらず、神経膠腫は依然として頑強で、診断から5年後に生存している患者はわずか5%だ」と、研究著者でミシガン大学医学部脳神経外科のRichard C. Schneider 大学教授であるペドロ・R・ローウェンシュタイン医学博士は述べている。
神経膠腫は従来の治療法に抵抗性を示すことが多く、また、腫瘍内の環境が免疫系を抑制するため、新しい免疫系治療法が効かないことがある。さらに、血液脳関門の通過という課題があり、これらの腫瘍に効果的な治療法を届けることはさらに難しくなっている。
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