二重幹細胞移植でハイリスク神経芽細胞腫の小児患者の治療が向上
従来、ハイリスク神経芽細胞腫小児患者の診断後5年以上の生存率は50%未満である。National Cancer Institute (NCI) の研究資金を受けてChildren’s Oncology Groupsコンソーシアムが実施した第3相試験で、標準的な治療に加え、第二の自己幹細胞移植 (ASCT、患者自身の幹細胞を移植) を行うことで治療効果の向上が見られた。3年後、二重移植を受けた患者の無疾患生存率が61.4%だったのに比して単一移植の患者の無疾患生存率は48.4%だった。また、副作用は単一移植も二重移植もほぼ同じだった。
6月3日より7日までアメリカ合衆国イリノイ州シカゴ市で開かれた2016 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meetingで発表された5,000件を超えるアブストラクトのうちでも、患者医療に大きな影響を与えると考えられた4件が6月5日 (日曜) の本会議で発表された。
研究論文筆頭著者で、ワシントン州シアトル市、Seattle Children’s Hospitalの医局員とUniversity of Washington School of MedicineのPediatrics教授を兼任するJulie R. Park, M.D.は、「この研究結果により、北米ではハイリスク神経芽細胞腫小児患者の治療法を変えることになるだろう。この疾患は依然として大勢の幼い命を奪っており、治療法の向上は喫緊の問題である。しかしながら、ハイリスク神経芽細胞腫に対して用いているレジメンは、小児がん患者に用いる医薬としては侵襲性と毒性がもっとも強いレジメンである。そのような理由から、これからの研究は、現行治療法の晩期障害を探ることと、さらに新しい毒性の低い治療法を開発することを重点にしなければならない」と述べている。
この試験は、新しくハイリスク神経芽細胞腫と診断された小児を集めて行われ、その年齢中央値は3.1歳だった。患者の大多数 (88%) はステージ4期であり、また38.2%はMYCN増幅と呼ばれる腫瘍ハイリスクの遺伝子異常があった。患者全員に、最初に2サイクルの高用量cyclophosphamide/topotecanを投与した後、移植に用いる幹細胞を血液中より採取。その後、多剤導入化学療法レジメンを6サイクルにわたって実施した。導入療法完了後、患者をランダムに選別し、carboplatin-etoposide-melphalan (CEM) 化学療法と単一ASCT移植を行うか、または二重ASCT移植を行ったが、初回のASCT移植の前にthiotepa-cyclophosphamideを投与し、さらに2回目のASCT移植の前に少し変更を加えたCEM化学療法を行った。二重ASCT移植グループの患者には、6週間から8週間の間に2回の移植を行った。単一ASCT移植グループは、179人の患者のうち129人が、1回の移植地固め療法を受けた後、GD2抗体 (dinutuximab) とサイトカイン免疫療法の治験に加わった。さらに二重移植グループの患者もほぼ同率の176人中121人が移植地固め療法の後、同じ免疫療法を受けた。この研究の一次エンドポイントは、3年間の無事象生存率 (EFS) または、患者総数に対する無作為化から3年経過後まで「事象」がなかった患者の百分率比率。この「事象」は、がんの悪化または再発、二次がんの診断、何らかの原因による死亡と定義されている。
主要結果
この研究に参加した全患者で参加から3年後のEFSは51%、3年全生存率 (OS) は68.3%だった。無作為化患者では、無作為化から3年後のEFSは、二重移植患者 (61.4%) が、単一移植患者 (48.4%) よりも有意味の高さだった。二重移植患者 (74%) の3年全生存率は、単一移植患者 (69.1%) よりもわずかに高かったが、その差は統計的に有意味ではなかった。Dr. Parkは、「神経芽細胞腫はほとんどの場合、診断から2年ないし3年で再発が起き、この3年の間に再発しなければ、長く生きられるチャンスが大きくなることはよく知られている。全生存率の違いを調べるためには長い試験期間が必要になり、最初のがん再発後に受ける追加治療を適正に管理できないことから、この研究では全生存率の違いを調べることはしなかった」と述べている。また、研究者は、この研究の後も10年にわたって研究参加患者のフォローアップを行うことになっている。研究の結果、移植後にGD2抗体とサイトカインを含めた免疫療法に参加した患者の方が一般的に良好な結果になった。その患者グループの場合、3年EFSは、二重移植患者 (73.2%) の方が単一移植患者 (55.5%) に比べてかなり高かった。また3年全生存率も、二重移植患者 (85.6%) の方が単一移植患者 (75.8%) に比べてかなり高かった。毒性強度はいずれも同じ程度だった。また、治療に関連した死亡例は、単一移植患者よりも二重移植患者の方が少なかった (2対8の比率)。
生命科学雑誌バイオクイックニュース: 2024年9月号
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