膵がん治療薬の試験としてはかなり大きな規模で行われた第3相試験で、gemcitabineと経口抗がん剤のcapecitabineを併用することで毒性を増すことなく生存率を引き上げることができることが示された。現在、gemcitabineは、膵がん摘出手術後の標準的な補助化学療法として世界的に用いられている。
この研究は、2016年6月3日の記者会見で発表されており、また、2016年6月3日から7日までアメリカ合衆国イリノイ州シカゴ市で開催された2016 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meetingにおいても発表された。
論文の筆頭著者で、イギリスのリヴァプール大学, Department of Molecular and Clinical Cancer MedicineのChair of Surgeryを務めるJohn P. Neoptolemos, M.A., M.B., B.Chir., M.D., F.Med.Sci.は、「残念ながら、ほとんどの膵がん患者は、がんと診断された時には手術は不可能だ。しかし、手術が可能な患者は、2種の一般的な抗がん剤を併用することで生存率が高められたという研究成果は大きい」と述べている。
European Study Group for Pancreatic Cancer (ESPAC) 4試験は、732人の患者を対象にして行われており、膵がん手術を受けた患者で行われた臨床試験としては歴史的に2番目の規模である。
手術後12週間以内の早期膵管腺がん患者はランダムに選別され、24週間にわたって、gemcitabineのみまたは、gemcitabineとcapecitabineとの双方を与えられた。
メディアン生存率は、併用化学療法で28か月、gemcitabineだけでは25.5か月だった。
また、両グループの5年生存率は、28.8%対16.3%だった。
Dr. Neoptolemosは、「両者のメディアン生存率はわずかなように見えるが、このがんの長期生存率向上はかなり大きい。
外科手術だけでは5年生存率は8%にしかならないが、補助化学療法を加えることで30%近くまで引き上げることができる」と述べている。
論文によると、調査対象になった患者の特徴は、現実の膵がん患者の場合と変わらない。
かなりの患者で、局所進行が激しい、あるいは侵攻性が強い、腫瘍が大きい、あるいは腫瘍の取り残しがあったなど、思わしくない予後要因があった。
しかし、そのような要因があっても、併用化学療法による生存率向上はほとんど変わりがなかった。
また、喫煙習慣の患者でも、がん診断後に禁煙した患者は、喫煙を続けた患者よりも良好な結果になった。
また、2つのグループで、副作用のタイプやその強さに大きな違いはなかった。
併用化学療法グループでは、激しい下痢 (14例対5例) と、疲労 (16例対14例) がやや多く見られた。
また、生活の質は双方のグループでほぼ同じだった。
ASCOの見地
ASCOの膵がん専門家、Smitha Krishnamurthi, M.D.は、「膵がんは今でももっとも治療の難しいがんの一つだ。
ジェネリック抗がん剤の化学療法を加えるだけで膵がん患者の生存率を向上させるだけでなく、患者の生活の質にほとんど影響しないことを突き止めたのは大きな収穫だ」と語っている。
次のステップ
この新しいgemcitabine-capecitabine併用化学療法の安全性は、この併用療法に他の治療法も加えられる可能性を示しており、患者にとっては治療効果のさらなる向上にもつながる。
今後の研究は、特定の併用療法がもっとも効果を発揮するのはどのような患者かを予測する試験法の開発を重点とするようになる。
GEMCITABINEとCAPECITABINE
このgemcitabineは、早期膵がんの標準的な補助治療として用いられる経静脈化学療法剤である。
アメリカでは、gemcitabineは、乳がん、卵巣がん、肺がんの抗がん剤としても認可されている。
また、capecitabineは、アメリカにおいては、乳がん、腸がんの治療薬として認可されている経口化学療法剤である。
gemicitabineもcapecitabineも、いずれもジェネリック医薬が販売されている。
膵がん
2012年には、世界中で338,000人が新たに膵がんと診断されている。
北米とヨーロッパで膵がんの発生率が高く、アフリカとアジアでは低い。
2016年にはアメリカで53,070人の成人が新たに膵がんの診断を受けると推定されている。
アメリカではがん死中膵がんが第4位を占めている。
また、2016年には41,780人が膵がんで亡くなると推定されている。
この研究は、Cancer Research UKの資金を受けて行われた。
また、この記事は、ASCO 2016 Annual Meetingのプレスリリースを基にしてまとめられた。
原著へのリンクは英語版をご覧ください
Combination Chemotherapy Prolongs 5-Year Survival Rate in Early-Stage Pancreatic Cancer After Surgery in Phase III Trial



