私達の歯を覆っているエナメル質はいつ進化したのか?またエナメル質は体のどこに最初に現れたのか? 2015年9月23日付Nature誌オンライン版に掲載された研究論文は、スエーデンのUppsala Universityと、中国は北京のInstitute of Vertebrate Palaeontology and Palaeoanthropology (IVPP) の研究者が、古生物学とゲノム学という全く異なる2つの研究分野のデータを総合し、この疑問に対して意外でしかも疑問の余地のない答を見つけたとしている。エナメル質は皮膚組織を起源として、後になって歯に移ったというのである。

 

このNature誌の研究論文は、「New Genomic and Fossil Data Illuminate the Origin of Enamel (新しいゲノム・データと化石デーがエナメル質の起源を解明)」と題されている。 誰でもエナメル質のことはよく知っている。朝、洗面台に向かって歯を磨く時、白く光る表面がエナメル質である。


このエナメル質は、歯独特の3種のエナメル基質タンパク質を基層として形成された鉱物質の燐灰石 (リン酸カルシウム) が主体になっており、生体でもっとも硬い物質である。人間も他の陸上脊椎動物と同じで、歯は口腔にしかないが、サメなど一部の魚類は、体表にも「楯鱗」と呼ばれる、細かな歯に似たウロコを持っている。化石で発掘される硬骨魚類や北米産の遺存種ガーパイク (Lepisosteus) などでは、鱗が「硬鱗質」と呼ばれるエナメル質状組織で覆われている。
 
Uppsala University, Department of Organismal Biology研究員のDr. Tatjana Haitinaは、Broad Instituteがシーケンシングを完了したガーパイクのゲノムを研究し、エナメル基質タンパク質3種のうち、2種に対応する遺伝子が含まれていることを突き止めた。これは条鰭綱の硬骨魚類では初めてのことだった。さらに、この2種の遺伝子は皮膚にも発現しており、硬鱗質がエナメル質の一種であることを強く示唆している。

しかし、エナメル質の起源はどこか? 口か、皮膚か、あるいは双方で同時に発生したか? その答は、Uppsala University のDr. Qingming QuとDr. Per Ahlbergが、北京のIVPP所属のDr. Min Zhuとの共同研究で、中国出土のPsarolepis (プサロレピス), スエーデン出土のAndreolepis (アンドレオレピス) という、いずれも4億年以上も前の化石種によって示された。

Psarolepisでは顔面のウロコと象牙質突起がエナメル質で覆われているが、歯にはエナメル質がない。一方、Andreolepisではエナメル質はウロコにしかない。Uppsala UniversityのProfessor of Evolutionary Organismal Biology、Dr. Ahlbergは、「PsarolepisやAndreolepisは、もっとも古い硬骨魚類に含まれており、従って、これらの種の歯にエナメル質がないことはその原始性であって、特殊進化の結果ではないと考えられる。また、エナメル質は硬鱗質と呼ばれる皮膚を起源としており、後になって歯に移動したようである。

この研究は、新しい古生物学的データとゲノム・データを総合した単一の分析によって組織の進化を探るという初めての試みだった。同研究チームは、この手法を用いて、今後も脊椎動物の硬組織の進化を研究していく考えである。

原著へのリンクは英語版をご覧ください
Enamel First Evolved in Skin and Only Colonized Teeth Much Later

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