たった一つの遺伝子変異で肥満になる
サイエンス出版部 発行書籍
たった一つの遺伝子変異で、神経細胞が身体から脳に食欲抑制シグナルを伝える事が出来なくなる。結果、食欲が貪欲になり、肥満体になる。この事を明らかにしたのは、ジョージタウン大学医療センターの研究チームである。2012年3月18日付けのNature Medicine誌ウェブサイトにオンライン掲載された本研究は、無制御な食欲による肥満を治療するため、この遺伝子の発現を刺激する方法を提示している。 研究チームはまた、マウスにおける脳由来神経栄養因子(Bdnf)遺伝子の変異が、脳神経細胞によるレプチンおよびインスリンの化学信号伝達を、非効率化することを発見した。ヒトの体内ではこれらのホルモンは食後にリリースされ、満腹信号を送る。しかし、このシグナルが視床下部内の正しい場所に到達しなかった場合、食欲は継続する。「樹状突起におけるタンパク質合成が体重コントロールにおいて重要であると分かったのは、今回が初めてです。本発見によって、脳が体重をコントロールする新しい方法が開発されるかもしれません。」と、ジョージタウン大学薬理学および生理学准教授、バオジー・ズー学術博士は語る。ズー博士はBdnf遺伝子を長期に渡り研究し、この遺伝子が神経間のコミュニケーションをコントロールする成長因子を生産することを発見した。 例えば成長中、Bdnfは神経間の化学信号伝達のための構造であるシナプスの形成および成熟のため重要である。Bdnf遺伝子は短い転写物と長い転写物を一つずつ作成する。長い型のBdnf遺伝子が欠けた場合、成長因子BDNFは神経細胞内でしか生産されず、樹状突起内では生産されないことがわかった。結果、神経細胞は未熟なシナプスを大量に生成し、マウスの学習および記憶力に影響を与える。ズー博士はさらに、同じBdnf遺伝子変異を持つマウスが重度の肥満体に生長することを発見した。他の研究チームでもヒト
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