嚢胞性線維症の治療研究に光明-幹細胞を用いたヒト型組織サンプルの自在な作製が可能に
サイエンス出版部 発行書籍
マサチューセッツ総合病院(MGH)のハーバード幹細胞研究所が発見したのは、嚢胞性線維症(CF)を治療する医薬品開発の道が、近い将来開けると思われる方法である。嚢胞性線維症は毎年1000人が発症し、500人の尊い生命を奪う疾患である。患者の皮膚の細胞から起こして、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を初めて作成し、これをヒト疾患特異的な機能性肺外皮へと導出する事に成功したのは、ジャヤライ・ラヤゴパル医師とその研究チームである。 この組織は気道を形作るもので、CFの致命的な症状が現れる箇所でもあるが、そこに引き起こされる不可逆的な肺疾患と容赦無い呼吸器不全は、遺伝子の変異が起因となる。その重要な組織サンプル(CF患者全体の70%に発生し、アメリカのCF患者では90%に観察される、デルタ-508遺伝子変異を有する組織サンプル)が、今では研究者が実験室で必要なだけ何度でも作成することが出来るようになったのだ。この組織サンプルはCF患者の2%に観察されるG551D変異も有しているが、この変異に特異的なCFには有効な医薬品が既に販売されている。この研究結果は2012年4月6日付けのCell Stem Cell誌に掲載された。ポスドクのホンメイ・モウ博士が主筆で、ラヤゴパル博士は上席筆者である。モウ博士は、本研究の底流を成すマウスにおける発生生物学を、僅か2年間で修得している。「私はそれをiPS細胞システムに応用しました。研究が思った以上に速く進み、素晴しい結果が目の前に見えているのは、本当に喜ばしいことです。肺疾患を治療する新規的な”低分子医薬品”への道を開くと思います。」と彼女は語る。 ハーバード幹細胞研究所(HSCI)の共同主幹であるドン・メルトン博士は、「この発見によって、何万という細胞を医薬品スクリーニングに掛けられるようになりました。そしてヒト型細胞がスクリーニング標的に
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