数多くのがんタイプを横断的に調べた記念碑的な研究で、がん細胞変異の世界はこれまで考えられていた以上に膨大であることが示されている。Broad Instituteが中心になって行ったこの研究では、何千人もの患者の腫瘍のゲノムを解析し、新しいがん遺伝子を数多く発見、既知のがん関係遺伝子のリストが25%も拡大された。そればかりでなく、研究の結果、まだ突き止められていない主要遺伝子が数多くあることも推測されている。

 


研究チームの業績は将来の抗がん剤開発に重要な基礎を築いただけでなく、何十という数のがんタイプの総合的なカタログを作るには10万人程度のがん患者の組織サンプルがあれば足りることを実証した。この研究論文の共同首席著者で、Broad Institute初代所長のDr. Eric Landerは、「ヒトのがん遺伝子の全体像を描くためにどれだけの作業が必要かを初めて突き止めた。非常に有望な展開といえる。遺伝子とその経路を知れば、新しい創薬標的がはっきりとつかめ、さらには効果的な併用療法の道も開ける」と述べている。


今回、この研究で解析された21種類のがんについては、過去30年間の科学者の研究で約135種類の遺伝子が何らかの原因になっている証拠をつかんできた。この新しい研究論文では、これらの遺伝子ががん発症に関わっていることを確認しただけでなく、既知のリストの4分の1に相当する新しいがん遺伝子を付け加え、さらには、細胞死、細胞成長、ゲノム安定性、免疫回避その他のがんに関連するプロセスに生体的な役割を果たしている遺伝子を33個も発見している。この研究の成果は、2014年1月23日付Nature誌に掲載されている。

研究論文の第一著者でBroadの計算生物学者、Dr. Mike Lawrenceは、「よく考えなければならない基本的な疑問は、がんの全体像を把握することができたか? ということだが、がんゲノムを考えただけでもまだそこまでに至っていないことは一目瞭然だ。がん遺伝子はまだまだ数多くあり、それを見つけなければならない」と述べている。
この研究論文の共同首席著者で、Broad InstituteのCancer Genome Computational Analysis groupのdirectorを務め、Broad準会員でもあるDr. Gad Getzは、「この研究で数多くのこれまで知られていなかったがん遺伝子を発見したことからも私たちがまだ全てを知り尽くしていないことは明らかだ」と述べている。Massachusetts General Hospital Cancer CenterのBioinformatics Program directorとdepartment of pathologyのdirectorも務めるDr. Getzは、「解析サンプル数の増加と遺伝子新発見数の増加率を比較してみれば、サンプルが増えれば増えるほど遺伝子の新発見も著しく増えている。これは未発見の遺伝子が数多くあることを示している」と述べている。
研究チームは、膨大な数のがん遺伝子突然変異をカタログ化するためには各がんタイプごとに2,000人程度のサンプルが必要になると推定している。これを約50種のがんタイプ全体に換算すると10万人分のサンプル解析が必要になるということである。Dr. Getzは、「世界中にはがん患者が3,200万人ほどいるから、10万人分のサンプルというのはごく妥当な数字ではないか」と述べている。

解析したがんタイプには、黒色腫、特定種類の肺がんなど突然変異の頻繁なタイプと、ラブドイド腫瘍や髄芽細胞腫など突然変異の少ない小児がんのタイプとがある。総数にして、5,000近いがんサンプルのゲノムを解析し、対応する健康な組織のサンプルと比較した。また、過去数年の間にこの研究グループが自ら開発した手法を使ってこれらのがんの既知のドライバー遺伝子ををほとんどすべて突き止めており、この手法の有効性が実証されたが、研究チームが突き止めた変異遺伝子は、どれが創薬に重要な標的となるかを判定するため、さらに研究を続けなければならず、Cancer ProgramのTarget Acceleratorなど、Broad Instituteの研究活動はまさしくそれを目的としている。もっかのところ、新しい研究作業でがんゲノムの世界への視野が広がりつつあり、今後サンプルの解析が進むにつれてどんな遺伝子が発見されるか興味をそそられる。

Massachusetts General Hospital Cancer CenterのPaul C. Zamecnik Chair in OncologyとHarvard Medical Schoolの病理学准教授も兼任するDr. Getz、Dr. Lawrence、Dr. Landerの他、Dr. Petar Stojanov、Dr. Craig H. Mermel、Dr. James T. Robinson、Dr. Levi A. Garraway、Dr. Todd R. Golub、Dr. Matthew Meyerson、Dr. Stacey B. Gabrielらもこの研究に携わった。また、この研究は、National Cancer InstituteとNational Human Genome Research Instituteのプロジェクト、「Tumor Genome Atlas (TCGA)」活動の一環として行われた。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Large-Scale Analysis of Over 20 Tumor Types Increases Catalog of Cancer Genes by 25 Percent

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