新たな視覚メカニズム発見:暗闇での視覚は光子検出を犠牲にコントラスト認識を強化

新たな視覚メカニズム発見:暗闇での視覚は光子検出を犠牲にコントラスト認識を強化

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人間の視覚が暗闇で驚異的な感度を持つ仕組みを解明 フィンランドのヘルシンキ大学を中心とする研究チームが、人間の視覚が暗闇で極めて高い感度を発揮する神経メカニズムを解明しました。本研究により、人間は微細な光の強度の違いを知覚する能力を持つ一方で、個々の光子(フォトン)を検出する能力を犠牲にしていることが明らかになりました。約100年にわたり議論されてきた問い——「人間の目は光の最小単位である光子を識別できるのか?」について、本研究は新たな答えを提示します。これまで、極限の暗闇での視覚知覚と網膜の神経活動を正確に関連付けることが困難だったため、この問題に対する明確な解答は得られていませんでした。しかし、今回の研究により、人間の視覚システムは単一光子の検出を犠牲にすることで、暗闇でのコントラスト認識を向上させる仕組みを持つことが実証されました。 本研究は、2024年5月27日にオープンアクセスジャーナル『Nature Communications』に掲載されました。論文タイトルは「Primate Retina Trades Single-Photon Detection for High-Fidelity Contrast Encoding(霊長類の網膜は単一光子検出を犠牲にして高精度なコントラスト認識を実現する)」です。 人間の視覚は物理学の限界に迫る性能を持つ 本研究を主導したペトリ・アラ=ラウリラ教授(Petri Ala-Laurila)は次のように述べています。 「本研究は、視覚神経科学において重要な前進です。人間の視覚システムは、物理学の根本的な限界に近い感度を持ち、暗闇における視覚機能の絶対的な閾値で動作していることが示されました。」 アラ=ラウリラ教授は、ヘルシンキ大学 生物・環境科学部およびアールト大学  神経科学・生体医工学部の2つの研究室

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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