感覚を取り戻すスマートバイオニック人工皮膚の開発

感覚を取り戻すスマートバイオニック人工皮膚の開発

サイエンス出版部 発行書籍

火傷や皮膚疾患、外傷などによる皮膚欠損が神経組織に損傷を与え、生命維持活動に必要な感覚機能や認知機能を失わせることがあります。このような損傷に対して新たに開発された「スマートバイオニック人工皮膚」が、感覚機能の回復を実現する可能性があると発表されました。

皮膚欠損による神経組織の損傷は、生命維持活動に不可欠な感覚機能や認知機能の喪失を引き起こし、精神的・身体的な苦痛をもたらします。自然治癒が不可能なほど重度の損傷の場合、人工皮膚の移植が必要となりますが、これまで開発された人工皮膚は主に皮膚再生に焦点を当てており、患者の感覚機能の回復には至っていませんでした。韓国科学技術研究院(KIST)のバイオマテリアルセンターのジョン・ヨンミ博士(Youngmee Jung, PhD)と、ポストシリコン半導体研究所のイ・ヒョンジュン博士(Hyunjung Yi, PhD)を中心とする研究チームは、延世大学のユ・キジュン教授(Ki Jun Yu, PhD)と成均館大学のキム・テイル教授(Tae-il Kim)との共同研究により、ヒトに移植可能な触覚スマートバイオニック人工皮膚を開発しました。従来の皮膚再生に焦点を当てた人工皮膚とは異なり、このスマートバイオニック人工皮膚は生体適合材料と電子デバイスを融合させることで、永久に損傷した触覚をも回復することができます。

研究チームが開発した人工皮膚は、コラーゲンとフィブリンという皮膚の主要成分で構成されたハイドロゲルであり、亀裂ベースの触覚センサーを挿入することで微細な圧力変化を検知することができます。この圧力変化は無線電力圧力周波数変調(WPPFM)回路を介して電気信号に変換され、触覚神経インターフェース電極を通じて神経に伝達されるため、装置は皮膚と同様の触覚機能を発揮します。さらに、コラーゲンとフィブリンは皮膚の弾力性と組織の結びつきを担い、傷周囲の皮膚細胞の増殖と分化を促し、皮膚再生を促進することがわかりました。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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