致死的ニパウイルスの「複製工場」の構造を解明!新薬開発へ道

致死的ニパウイルスの「複製工場」の構造を解明!新薬開発へ道

致死率が高く、有効な治療法もまだないー。そんな恐ろしい「ニパウイルス」の増殖を止める鍵が、ついに見つかるかもしれません。ウイルスの心臓部とも言える「複製工場」の設計図を、最新の技術で詳細に描き出すことに成功したのです。ニパウイルスは、ヒトに致命的な結果をもたらす高病原性の人獣共通感染症ウイルスであり、承認された治療法が存在しないため、公衆衛生上の重大な懸念事項であり続けています。標的を定めた抗ウイルス戦略を開発するためには、そのRNAポリメラーゼ装置の分子構造を解明することが極めて重要です。 この度、ニパウイルスのL-P複合体(ポリメラーゼLとリン酸化タンパク質Pの複合体)について、2つのアポ状態(基質などが結合していない状態)のクライオ電子顕微鏡構造が解明され、Lタンパク質内のRNA依存性RNAポリメラーゼドメインとポリリボヌクレオチジル転移酵素ドメインの構造が明らかになりました。[編集者注:ウイルスのポリメラーゼ複合体は、ポリメラーゼ(L)とリン酸化タンパク質(P)から構成され、ウイルスのRNAゲノムを複製・転写します。] 構造解析の結果、Pタンパク質の四量体が、ユニークなインターフェースを介してRdRpドメインに固定されている様子が観察されました。機能検証により、PRNTaseドメイン内にある進化的に保存された2つの亜鉛結合モチーフが、酵素活性に不可欠であることが確認されています。さらに、構造解析からLタンパク質のC末端領域の柔軟性が高いことや、ヌクレオチドの入り口近くにPタンパク質のXDリンカーが特殊な配置をとっていることが明らかになり、鋳型RNAへのアクセスを調節する役割が示唆されました。 L-P間の相互作用を破壊する標的変異導入実験では、ポリメラーゼ活性が著しく低下し、この相互作用がメカニズム上必須であることが強調されました。モノネガウイルス目に属す

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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