クロロフィルを生産するが光合成しない微生物 corallicolidが発見された。この微生物は絶滅の危機に瀕するサンゴ礁を保護する鍵になるかもしれない。
初めて、クロロフィルを生産するにも関わらず光合成に従事しない微生物が発見された。 それは世界中のサンゴの70%で発見され、将来的にサンゴ礁を保護するための手がかりを提供する可能性があるため、この特殊な微生物は「corallicolid」と命名された。2019年4月3日にNatureのオンラインで報告されたこの論文は「クロロフィル生合成遺伝子を含む広範囲のサンゴ感染アピコンプレクサ(A Widespread Coral-Infecting Apicomplexan with Chlorophyll Biosynthesis Genes.)」と題されている。
この研究について、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)の植物学者で上級研究者であるPatrick Keeling博士は、次のように述べている。「この微生物は全く新しい生化学的疑問を投げかけている。それは寄生虫のように見え、そしてそれは間違いなく光合成ではない。しかし、それは依然としてクロロフィルを作り出す。」
クロロフィルは、植物や藻類に含まれる緑色の色素で、光合成中に太陽光からエネルギーを吸収することができる。 「クロロフィルはエネルギーを捕捉するのに非常に優れているので、光合成なしでクロロフィルを持つことは実際には非常に危険だ。それは光合成なしでエネルギーをゆっくり放出するのは、細胞の中に爆弾を抱えて生きるようなものだ。」とKeeling博士は語った。
サンゴ礁を構成する多種多様なサンゴならびに黒サンゴ、ファンサンゴ、マッシュルームサンゴ、イソギンチャクの胃腔に生息している。 それらは、光合成が起こる植物および藻類細胞の一部であるプラスチドと呼ばれる細胞コンパートメントを有する寄生虫グループの一部であるアピコンプレクサである。
最も有名なアピコンプレクサは、マラリアの原因である寄生虫(熱帯熱マラリア原虫および他のマラリア原虫種)である。 10年以上前に、アピコンプレクサに関連する光合成藻類が健康なサンゴから発見された。これは、サンゴに付着した良性の光合成生物から進化し、今日知られている寄生虫に変わる可能性があることを示している。 生態学的データによると、サンゴ礁にはいくつかのアピコンプレクサが含まれているが、最も一般的なものであるサンゴリコリドはこれまで研究されてこなかった。 この微生物は新しいパズルを明らかにした。それは色素体を持っているだけでなく、クロロフィル生産に使われる4つの色素体遺伝子すべてを有している。
UBCのポスドク研究員で研究の筆頭著者であるWaldan Kwong博士は、次のように述べている。 「これらの微生物がなぜ光合成遺伝子を有しているのか不明だ。ここで起こっているいくつかの新しい生物学があるが、これは我々が今まで見たことのないものだ。」
この研究者らは、corallicolidの詳細な研究がサンゴの生息地についてより洗練された理解をもたらし、それらをより良く保存できるようになることを願っている。
画像:Corallicolidは、世界中のサンゴの70%に見られる (提供:Patrick Keeling Lab,UBC)
BioQuick News:Scientists Discover First Organism with Chlorophyll Genes That Does Not Photosynthesize; Unusual Organism May Provide Clues on How to Protect Endangered Coral Reefs
生命科学雑誌バイオクイックニュース: 2024年9月号
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