Georgia State Universityの研究チームによれば、褐色脂肪細胞は感覚神経を通して脳と通信しており、体脂肪の総量や減少量など肥満と闘うためにカギとなる情報をやりとりしている可能性がある。2015年2月4日付The Journal of Neuroscienceに掲載された研究論文は、褐色脂肪細胞が活性化する際に脳との間で交わす通信について解説している。

 この論文は、「Brown Adipose Tissue Has Sympathetic-Sensory Feedback Circuits (交感・感覚帰還回路を持つ褐色脂肪組織)」と表題され、実験はシベリア・ハムスターを使って行われた。褐色脂肪組織は、体を動かす熱を発生し、エネルギーを消費するためにカロリーを燃やす「良い脂肪組織」とか「健康な脂肪組織」と考えられており、これに対して体内ではるかに量の多い白色脂肪は後で使うためにエネルギーを貯蔵するもので、糖尿病や心疾患など健康のリスクを高めることがある。研究の結果から、褐色脂肪組織はエネルギー燃焼量を増やすことができるという重要な役割を担っており、適度の減量と肥満防止のために利用できる可能性が示された。論文の第二著者でGeorgia State UniversityのNeuroscience Institute and Center for Obesity Reversal博士号課程研究生、John Garretsonは、「製薬会社は褐色脂肪組織をターゲットとしてこれをさらに活性化する方法を研究している」と述べている。

現行の研究で、通常は脳から発せられる交感神経系の信号をまねる薬剤を使って褐色脂肪組織を活性化すると、褐色脂肪は感覚神経を活性化して脳に応答することが突き止められている。褐色脂肪組織から出ている感覚神経は直接の化学的活性化や熱生成に反応し、活発な活動を始める。

Garretson氏は、「褐色細胞組織から出ている感覚神経の機能を調べたのはこの研究が初めてだった。褐色脂肪は比較的新陳代謝に重要な能動的な器官であり、この研究で褐色脂肪細胞の情報伝達の経路を新しく突き止めた。この研究から脂肪と脳の情報交換についてさらに理解が深まり、これは人間の肥満の治療にも非常に役立つものだ。褐色脂肪の多い人は新陳代謝も活発で2型糖尿病発症率も低く、一般に細身だという証拠も突き止められている。褐色脂肪細胞の活動を増大したり、褐色脂肪の量そのものを増やす方法が突き止められれば、より効果的にまた迅速に体重を減らす方法が見つけられることと思う」と述べている。



研究チームは、褐色脂肪細胞が脳にもっと様々な情報を送っているのではないかと考えている。たとえば生成熱量とか、どんなタイプの自由エネルギーがどれだけ消費されているか、あるいは貯蔵されているか、体にどれだけの脂肪が蓄えられているか、あるいは消費したかなどの情報である。

Garretsonは、「褐色脂肪は、温度が上がり、熱を発生し始めると、能動的に健康維持の役目を果たし、新陳代謝を促進し、白色脂肪を燃焼する働きを助けるのである。私の研究室のDr. (Vitaly) Ryuや他のメンバーが、褐色脂肪組織は、熱くなると、それを脳に知らせることに気づいた。これはサーモスタットのようなフィードバックの働きをしているのではないだろうか。褐色脂肪が熱くなっていることを脳に伝えると、脳が褐色脂肪細胞にどういう指令を出すかが決まってくるのではないかと考えた」と述べている。脳が脂肪組織と通信し、体が機能するために組織を分解して自由エネルギーを放出するか消費するよう指令することはすでに知られている。この研究では、褐色脂肪組織と脳の間にフィードバックループがあることが示された。

Garretsonは、「研究チームは何年もかけて脂肪と脳との間の通信を研究してきたが、私たちの研究チームのように神経系を通じた脂肪と脳との間の通信を調べた研究室は世界中でもほとんどない」と述べている。この研究チームのメンバーには、Dr. Ryu、Garretson、Dr. Yang Liu、Dr. Cheryl Vaughanの他、Georgia State  UniversityのDirector of the Center for Obesity Reversalを務めるDr. Timothy Bartnessらがいる。
 
■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Study Demonstrates Feedback Loop Between Brown Fat and the Brain

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