化学療法: 腸内細菌が効果促進の働き
サイエンス出版部 発行書籍
Institut Gustave Roussy、Inserm、Institut Pasteur、INRA (French National Agronomic Research Institute) の研究者が共同で行った研究で、がん化学療法は、腸管微生物とも呼ばれる腸内細菌叢の助けを借りると単独の場合よりも優れた効果を現すという驚くべき結果が出た。実際、化学療法によく用いられている医薬の一つは、その効果が分子レベルで腸内細菌叢の特定の細菌を血流やリンパ節に送り込む能力によっていることが突き止められている。 送り込まれた細菌は、一旦リンパ節に入り込むと免疫防御系を刺激して新たに防御態勢を強化し、それによって体が悪性腫瘍と戦う力を強化するのである。この研究論文は、2013年11月22日付Science誌に掲載された。腸内細菌叢というのは100兆個ほどの腸内微生物の集まりである。 この腸内細菌叢は、様々な細菌種が体に有害となる可能性のある異物を排除したり、体を汚染する病原体を抑え込む多様な機能を果たしており、人体にとっては重要な器官になっている。さらには腸内微生物は消化した食物の分解を助け、腸管での栄養物の吸収や代謝の最適化に役立っている。このような大量の細菌は、個人の誕生時から腸内に棲み着き、免疫防御系の成熟に大きな役割を果たしている。ただし、腸内細菌叢を形成している細菌種は人によって異なり、特定細菌種が体に存在したりしなかったりすることが、人によって特定の病気にかかりやすい、あるいはかかりにくいという違いをもたらしていると考えられる。がんの分野では、Institut Gustave Roussyの“Tumour Immunology and Immunotherapy,” Inserm Unit 1015のDirector、Laurence Zitvogel教授が
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