いくつかの癌における制御不能な腫瘍増殖の主な原因は、細胞内の低酸素環境である可能性がある、とジョージア大学の研究が明らかにした。本発見は幅広く受け入れられている‘遺伝子変異が癌の成長の原因である’という説に逆らうものである。「低酸素症、または細胞内の低酸素レベルが、特定の癌タイプの主な原因だとしたら、悪性腫瘍の治療法が著しく変わることでしょう。」と、リージェンツ・ジョージア研究同盟学者、そしてフランクリン・カレッジの生物情報学および計算生物学教授、イン・ズー博士は語る。研究チームは公的データベース内の、七つの異なる癌タイプより集めたRNA(トランスクリプトーム)データを解析した。
そして、細胞内における長期的な酸素不足が癌の成長を促している要因である可能性が高いことを発見したのである。本研究は2012年4月20日付けのJournal of Molecular Cell Biology誌のオンライン版に掲載された。以前の研究では、細胞内低酸素レベルは癌の成長における要因の一つとされてはいたが、主な原因としてはリンクされていなかった。世界中における高い羅患率は遺伝子変異のみでは説明出来ない、とズー博士は述べる。また生物情報学は生物学および計算化学を結合したものであり、癌を新たな視点から見る事が可能であるとズー博士は考える。
遺伝子レベルの突然変異は、ガン細胞に通常細胞に対する優勢力を与えるが、新しい癌の成長モデルでは癌遺伝子の増殖など、一般的な機能不全の存在を必要としない。
「ガン治療薬は、特定の変異の分子レベルでの根本的原因叩く設計が成されていますが、ガンはしばしばそこをバイパスしてしまうのです。そのため、遺伝子変異はガンの主な原因でないかもしれない、と我々は思うのです。」と、ズー博士は説明する。これまで多くのガン研究は、特定のガンに関連付けられている、遺伝子変異に対抗する薬を開発することに重点を置いてきた。本研究チームはスタンフォード・マイクロアレイ・データベースよりダウンロードしたデータを解析した。
解析には、七種類のガン(乳、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃)における異常な遺伝子発現パターンを検出するソフトウェアプログラムが使用された。このオンラインデータベースで、科学者達はマイクロアレイチップ(遺伝子材料を多量に含んだ小さなガラスのスライド)から情報を調べることが出来る。
ズー博士は、HIF1A遺伝子を細胞内分子酸素量のバイオマーカーとして研究を進めた。七種類のガン全てにおいてHIF1Aは増加し、ガン細胞における酸素レベルの低下を示した。
細胞内の低酸素は、細胞が食べ物をエネルギーに変換するために使用する非常に効率的な方法である酸化的リン酸化の活動を妨げる。酸素が低下すると、細胞はATPと呼ばれるエネルギー単位を生成するために解糖系に切り替える。
解糖はエネルギーを取得するにあたって非常に非効率的なため、ガン細胞は生存するための食べ物、特にグルコースを取得するためにさらに働かなければいけないのである。
酸素濃度が危険なほど低レベルに落ちると、血管形成プロセスが開始される。新しい血管は新鮮な酸素を提供するため、細胞および腫瘍内の酸素濃度を向上させ、ガンの成長を遅らせる。ただしこの遅延は一時的なものに過ぎない。
「ガン細胞はより多くのエネルギー源を受け取れば成長します。これにより腫瘍のバイオマスは増加し、さらに低酸素になります。エネルギー変換の効率は下がり、細胞はさらにエネルギー不足になるため血液から栄養を取ろうとします。これが悪循環を作成し、これがガンの主な原因なのでしょう。」と、ズー博士は語る。
この新しいガン成長モデルは、多くのガンが短期間(主に3ヶ月から6ヶ月の間)で薬剤耐性を持つようになる理由を説明できるかもしれない。この新規モデルを将来のガン研究を通してテストする重要性をズー博士は強調する。そしてこのモデルが有効であれば、研究者達は細胞内低酸素を防止する方法を見つける必要が出てくる。そして、ガン治療における大きな変化に繋がるのである。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください:New Model Suggests Low Oxygen Levels, Not Mutations, Drive Cancer Growth



