ヒト腸内ウィルスの遺伝的変異が進化の元であった
サイエンス出版部 発行書籍
腸内細菌がヒトの健康や代謝および疾患を調節する上で重要であることが、様々な証拠と共に注目されてきている。しかし、細菌はその役割の一部でしかない。これらの細菌に感染するウィルスもまた、ヒトを形成していくと言っても過言ではない。2012年3月6日付けのPNAS誌に掲載された本研究は、ペンシルベニア大学医学部ペレルマン学校微生物学教授、フレドリック・D・ブッシュマンが主導したものだ。健常者の腸内に存在するウィルスのDNA(virome:ヴィロム)をシーケンシングした本研究では、12人の便から約480億個のDNA塩基、または遺伝子のビルディングブロックが収集された。 研究チームはこれらのブロックをパズルピースの様に組み立て、ウィルスゲノムを再現した。個人ごとに数百から数千の異なるウィルスが集められ、それら一つを除いた全てが、研究チームが予想した通りバクテリオファージ(バクテリアだけに感染するウィルス)であった。異なる一つは、1検体のみに観察されたヒト病原体のヒトパピローマウィルスであった。 バクテリオファージは多くの細菌にとって天敵のようなものであるが、ヒトのミクロビオームにおけるこれらの役割はごく最近研究され始めている。大学院生、サムエル・マイノット率いるブッシュマン博士の研究チームは、研究対象である12人のヒト検体のウィルス数の違いを調べるため、配列の違いが最も顕著である塩基の広がりを探した。研究チームの調査の結果、51の高頻度可変領域が12人の間で同定され、驚くことにこれらは逆転写酵素遺伝子に関連していたのである。一般的にHIVなどのレトルウィルスの複製と関連付けられている逆転写酵素は、RNAをDNAにコピーする。研究しつ尽くされている逆転写酵素であるボルデテラ・バクテリオファージの高頻度可変領域、BPP-1との配列および構造的類似性を有する領域が、51領域中29領
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