深海ムール貝の核内寄生細菌の謎に迫る
サイエンス出版部 発行書籍
深海ムール貝の核内に生息する細菌寄生虫の生存戦略を解明 生物と細菌は密接な関係を持つことが知られていますが、その中でも細菌が宿主の細胞内に住みつく事例は稀です。さらに細胞核(細胞の制御センター)内に住む細菌は、これまでほとんど知られていませんでした。しかし、ドイツのマックスプランク海洋微生物学研究所の研究者たちは、動物の細胞核内に寄生する細菌について初めて詳細に解明しました。この研究は2024年9月6日にNature Microbiology誌に掲載され、「An Intranuclear Bacterial Parasite of Deep-Sea Mussels Expresses Apoptosis Inhibitors Acquired from Its Host(深海ムール貝の核内寄生細菌が宿主由来のアポトーシス阻害因子を発現する)」と題されています。 核内で増殖しながら宿主を維持する仕組み この寄生細菌「カンジダタス・エンドヌクレオバクター」は、深海の熱水噴出孔や低温湧出帯に生息するムール貝の核内に寄生します。一つの細菌細胞が宿主の核内に侵入し、その後約80,000個以上にまで増殖します。この過程で核は元の大きさの50倍に膨張します。「この細菌が核内にどのように侵入し、どのようにして必要な栄養素を得て大量に増殖するのか、さらに宿主細胞を死なせない方法を解明したかった」と、共同研究者のニコ・ライシュ博士(Niko Leisch, PhD)とニコール・デュビリエ博士(Nicole Dubilier, PhD)は語ります。 研究チームは分子生物学的手法やイメージング技術を用いて、Ca. Endonucleobacterが宿主の糖や脂質などを栄養源としていることを発見しました。この細菌は宿主の核酸を分解せず、この特異な摂食戦略によって宿主細胞を長期間機能させた
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