鳥インフルエンザ新株、哺乳動物、ヒトに適応を確認
サイエンス出版部 発行書籍
中国で少なくとも9人が鳥インフルエンザで死亡しており、その患者から採取したサンプルの遺伝子解析の結果は、ウイルスが進化してヒト細胞に適応するようになったことを示しており、世界的なインフルエンザ大流行が起きる危険性が心配されている。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの田代眞人博士、University of Wisconsin-Madisonと東京大学の河岡義裕博士が指揮するグループの共同研究論文が論文雑誌「Eurosurveillance」の2013年4月11日付に掲載された。 同グループは、4人の鳥インフルエンザ・ウイルス犠牲者から採取したH7N9の遺伝子配列を調べ、同時に上海市場の鶏と環境から得たサンプルも検査した。 鳥インフルエンザ研究分野の権威、河岡博士は、「鶏や環境から分離した株と違って、ヒトから分離した株はタンパクに突然変異が観察され、ヒトの細胞で効率的に増殖するだけでなく、ニワトリに比べてやや低いヒトの上気道の体温でも増殖できるように変化している」と述べている。中国の研究者が国際的なデータベースに登録した遺伝子配列をもとにして導き出されたこの発見で、怖れられている新型鳥インフルエンザに関する分子レベルの手がかりが初めて得られた。この新型ウイルスのヒト感染症例は、2013年3月31日に中国疾病予防コントロール・センターが発表している。河岡博士は、「この新型ウイルスでは、これまでに33人が発症し、9人が亡くなっている。これがすぐに大流行を引き起こすかどうかはまだ予測には早すぎるが、このウイルスが哺乳動物、中でもヒトを宿主として適応しつつあることは疑いようがない」と語っている。さらに河岡博士は、「このウイルスの進化の機序を理解し、感染を予防するワクチン候補を開発するためには、ウイルスの遺伝子情報を手に入れることが不可欠だ」と述べている。イン
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