絶滅危惧種のウマの往古の祖先と豊かな遺伝的多様性
サイエンス出版部 発行書籍
プルツワルスキー馬として知られる絶滅危惧種のウマが、研究者たちが予測していた以上に家畜ウマとの系統的関係がかなり離れている事が、ペンシルバニア州立大学生物学部のカタリーナ・マコバ博士率いる研究チームにより報告された。4血統のプルツワルスキー馬について、母から子に排他的に遺伝するゲノム情報部分−ミトコンドリアDNA−に特化して、家畜ウマ(学名Equus caballus)のDNA情報との比較検討が成された。 その結果、これまで学者が想定していたようにウマの家畜化が始まった6000年から10000年前にプルツワルスキー馬と家畜ウマとが分かれたのではなく、それよりずっと以前に分化していた事が明らかになった。本研究で収集されたデータによれば、現代のプルツワルスキー馬種はこれまでに予測されていたよりも遥かに多様性のある遺伝子プールを有している事が示唆されている。この新たな知見は絶滅危惧種を救う為の保護努力の重要性を大いに主張するものであるが、この馬種は中国とモンゴルの一部とカルフォルニア州とウクライナの自然保護地区に合わせて2000頭しか生息していない。本研究はJ. Genome Biology and Evolution誌に掲載予定であるが、先に2011年7月29日のオンライン誌に発表される。 プルツワルスキー馬はずんぐりした小型のウマで、野生で生息しているのを発見したロシアの探検家の名前に因んで命名されている。20世紀中頃には、多くの品種や個体の死を招く遺伝的ボトルネック効果と言われる進化事象によって、絶滅の危機に陥った。「悲しい事ですが、遺伝的ボトルネック効果というのは人間の行為によるものなのです。プルツワルスキー馬は食糧として狩られ、元来の生息地域であった大草原から農場に移され、生活と繁殖の場を奪われたのです。1950年後半にはたったの12頭しか残っていませんでした
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