リー症候群では乳児は健康体で生まれたかのように見えるが、時間の経過と共に悪化していく運動や呼吸障害を発症し、ほとんどの場合3歳で死に至る。これは、細胞内のミトコンドリアが、脳が発達していくために必要なエネルギーの需要についていけないからである。この度、この病気の原因である遺伝子の欠陥が見つかったと、Cell Press出版のCell Metabolism誌9月号に発表された。今回の研究結果は、二人のリー症候群患者の、ミトコンドリアで活性化しているタンパク質をコードする約1000の遺伝子の一部を配列決定して得たものである。

 

「これは、 シーケンシング技術がこれからの診断の進歩に役立つ可能性を表しています。家族歴のない個人にも適用可能なアプローチです。」と、オーストラリアのマードック子供研究所のデビッド・ソーバーン博士は語る。リー症候群は、現在認識されている小児ミトコンドリア病の中でも最も一般的なものであり、今回新しく発見された遺伝子を加えると、変異した際にリー症候群を引き起こす遺伝子は約40種類にものぼる。


この新しく発見された遺伝子はMTFMと言われ、ミトコンドリアの活性酵素をコードしている。ミトコンドリアは独自のDNAをもっており、これらは局所的にコード化されたタンパク質と細胞の核ゲノムでコード化された後に移入されたタンパク質の組み合わせによる違いを有している。ミトコンドリアDNAでコード化されたMTFMT酵素は、tRNAに作用し、タンパク質翻訳を開始できる形に変換する役割を果たす。この酵素が欠けていると、ミトコンドリアはタンパク質を効率的に翻訳することが出来ず、リー症候群として知られる症状を引き起こすのである。

患者の皮膚細胞の研究では、翻訳不全がMTFMT遺伝子を置き換える事によって補正出来る事が明らかにされた。リー症候群において、分子診断が必ずしも治療法につながるかどうかは定かではないが、現在の研究結果は意味のある進展と言える。「明確な答えがあることで、患者の家族は非常に安心する事が出来る」と、ソーバーン博士は言う。「彼らは一人の医師から別の医師へとたらい回しにされる事がしばしばあるのです。診断を正確に行う事で、治療は出来なくても、他の病院で診断のために再検査する必要はなくなります。疾患の診断と共に、その遺伝子的原因を明確にしておけば、夫婦がまた一人子供を授かる際にともなうリスクについての情報を提供することも出来ます。」と博士は語る。

この診断結果は、子供を設ける時に通常の方法に代わる手段(人工授精など)を使用するか否か、そして使用するならばドナー精子や卵など、どのような手段を使用するかの検討に役に立つ。臨床的意義に加えて今回のような新しい発見は、人間のミトコンドリア生物学と進化への深い理解への手立てを提供する。ミトコンドリアは、他の細胞に貪食されたバクテリアから生じたものであり、修飾されたtRNAを使用して翻訳を開始する様は、その微生物の過去の名残であると考えられる。「この要件がなぜ維持されているかはわかりません。つまり、ミトコンドリアのタンパク質が怪我などの後に循環血に進入すると、細菌性のタンパク質と勘違いされて全身性炎症反応を誘発するということです。」と、ソーバーン博士は述べる。

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