カンガルーの遺伝子配列解析が完了
サイエンス出版部 発行書籍
カンガルーは進化系統樹において特異な位置を占めているが、今日までそのDNA配列は解析されていなかった。この度、BioMed Central誌のオープンアクセスジャーナルGenome Biology 2011年8月19日付に、国際研究チームによるカンガルーのゲノムシーケンスが発表された。タマーワラビーと呼ばれるカンガルー種で、その遺伝子に隠されたカンガルー独特の「跳躍」に関与する遺伝子が見つかったようである。 「タマーワラビー遺伝子解析プロジェクトにより有袋類が私たちのような哺乳類とどのように違うのかを理解する事ができるでしょう」と話すメルボルン大学のレンフリー博士はこのプロジェクトを引っ張ってきた人物で、その国際研究チームはオーストラリア、米国、日本、英国、ドイツからの研究者によって構成されていた。タマーワラビーには大変興味深い生物学的特徴があり、例えば、12ヶ月の妊娠期間中11ヶ月は子宮の中で仮死状態である。生まれる時にはたったの0.5グラムの体重しかなく、それから9ヶ月は母親の腹袋に中で護られながら過ごす。研究者たちは、このようなタマーワラビーの興味深い生態にどのような遺伝子が関与しているのかを、配列解析によって手掛かりを掴みたいと考えている。 「跳躍」に関する遺伝子に照準を合わせるのに加え、タマーワラビーが持つ鋭い嗅覚に関与する1,500個の「嗅覚」遺伝子や、大腸菌や病原バクテリアから新生児を守る為に母乳中に抗生物質を生成する遺伝子などの探索が計画されている。レンフリー博士が説明するように、タマーワラビーの遺伝子から教わることは、きっと将来に「人間の疾病治療探索」の役に立つと考えられる。カンガルーの遺伝子を知ることは哺乳類の進化の研究につながる。カンガルーの祖先が少なくとも1億3000万年前に他の哺乳類に分化した事を考えれば、カンガルーのDNA解析は、人類の
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