名前なき生物をどう守る?DNAだけが見つかる「ダークタキサ」問題が地球の未来を脅かす

私たちの足元には、地球の気候さえも左右する、広大で未知なる「地下世界」が広がっています。その主役は、植物と共生し、壮大なネットワークを築く菌類たち。しかし、最新の研究で、その主役たちの実に8割以上が、名前も姿もわからない「正体不明の存在」であることが明らかになりました。この地球の“ダークマター”とも言える菌類が、今、静かに失われる危機に瀕しています。 菌根菌は、植物に必須栄養素を供給し、炭素を土壌の奥深くまで引き込む地下ネットワークを形成することで、地球の気候と生態系を調節するのに役立っています。科学者や自然保護活動家たちは、これらの地下の菌類を保護する方法を見つけようと急いでいますが、彼らはダークタキサ(暗黒分類群)、つまりDNA配列のみが知られており、名前が付けられたり記載されたりした種に結びつけることができない種に、繰り返し遭遇しています。地球上に存在する約200万から300万種の菌類のうち、正式に記載されているのはわずか15万5000種と推定されています。 この度、2025年6月9日に学術誌『Current Biology』に掲載されたレビュー論文で、外生菌根菌種の実に83%もの種が、いわゆるダークタキサであることが示されました。この研究は、東南アジアや中南米の熱帯林、中央アフリカの熱帯林や低木林、モンゴル北方のサヤン山脈の針葉樹林など、未知の菌根菌種が集中する地下のホットスポットを特定するのに役立ちます。この発見は、保全活動に深刻な影響を及ぼします。 自然科学において、名前は重要です。伝統的に、種が記載されると、その種と属を記述する2つのラテン語からなる学名が与えられます。これらの名前は、菌類、植物、動物を分類するために使用され、保全や研究にとって重要な識別子となります。野生の菌根菌のほとんどは、生物が環境中に放出した遺伝物質である環境DNA(eDNA
Life Science News from Around the Globe
Edited by Michael D. O'Neill
バイオクイックニュースは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中のバイオニュース(生命科学・医学研究の動向)をタイムリーにお届けします。バイオクイックニュースは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill