2023年4月20日にDiabetologia(the European Association for the Study of Diabetes [EASD]の学術誌)に掲載された新しい研究では、小児期に逆境を経験した人は成人期早期に2型糖尿病になるリスクが高いことがわかったという。本研究は、デンマーク・コペンハーゲン大学公衆衛生学部疫学課のレオニー・K・エルセンブルグ助教(写真)らによって行われ、男女の成人期早期(16~38歳)における小児期の逆境と2型糖尿病発症の間に関連性があるかどうかを明らかにすることを目的としている。この論文は、「小児期の逆境と成人期早期の2型糖尿病リスク: 120万人を対象とした人口規模のコホート研究の結果。(Childhood Adversity and Risk of Type 2 Diabetes in Early Adulthood: Results from a Population-Wide Cohort Study of 1.2 Million Individuals.)」と題されている。
青年期および若年成人の2型糖尿病の世界的な有病率は、主にライフスタイルの変化と肥満率によって、過去100年の間に大幅に増加している。特に、早期発症(40歳以前)の場合、病態がより侵襲的であると考えられ、罹患者は現役世代であり、生涯治療を必要とする可能性があり、合併症のリスクが高まるため懸念されている。これらの要因が相まって、成人期早期の2型糖尿病の危険因子を特定することは、公衆衛生上、極めて重要な問題である。
小児期の逆境は、虐待、家族内の身体的・精神的疾患、貧困などの経験を含み、若年成人においても糖尿病の発症と関連している。逆境は、生理的なストレス反応を引き起こし、神経系、ホルモン、身体の免疫反応に影響を及ぼしかねない。また、精神的な健康にも影響を与え、睡眠不足、喫煙、身体活動の低下や座りがちな行動、アルコール使用量の増加、肥満や2型糖尿病発症リスクの上昇につながる不健康な食事など、健康に悪影響を及ぼす行動の変化につながる可能性がある。
これまでの研究で、小児期のマルトリートメントと若年期の2型糖尿病発症との関連が明らかにされているが、他の種類の逆境との関連を示す証拠は乏しく、性差に応じた推定値も不足している。また、著者らは、「この研究領域では、小児期の逆境を客観的かつより包括的に測定する前向き研究の必要性など、方法論の改善が必要である。」と指摘している。
研究者らは、1980年1月1日以降にデンマークで生まれた子どもの背景と小児期の逆境に関するデータを含む、デンマークのライフコース・コホート研究(DANLIFE)のデータを使用した。16歳以降の追跡調査を可能にするため、研究サンプルは2001年12月31日までに生まれた人に限定し、幼少期に糖尿病と診断された人、共変量要因のデータが不十分な人、16歳以前に移住または死亡した人は除外した。
この研究対象者は、物質的困窮(家庭の貧困、親の長期失業)、喪失または喪失の脅威(親の身体疾患、兄弟の身体疾患、親の死、兄弟の死)、家族力学(里親委託、親の精神疾患、兄弟の精神疾患、親のアルコール依存、親の麻薬依存、母親の分離)の3次元それぞれにおける逆境への曝露(0歳から15歳まで)の年間カウントに基づいて5種類の小児逆境グループに分けられた。
この5つのグループでは、子どもらは、1.子ども時代全体を通して比較的低いレベルの逆境を経験した(54%)、2.特に幼児期の物質的困窮(20%)、3.子ども時代と青年期を通して物質的困窮(13%)、4.身体疾患や家族内の死が比較的高いレベル(9%)、5.3次元すべてにおいて比較的高いレベルの逆境(3%)、となっている。
調査対象者1,277,429人のうち、女性2,560人、男性2,300人が、平均10.8年の追跡調査期間中に2型糖尿病を発症した。その結果、「逆境が少ない」群に比べ、その他の逆境群では、成人期早期に2型糖尿病を発症するリスクが男女とも高いことがわかった。3つの次元すべてにおいて逆境の割合が高い「高逆境」群では、糖尿病の発症リスクが男性で141%、女性で58%高く、男女それぞれ10万人年あたり36.2人と18.6人が新たに発症することになる。
親の教育レベル、妊娠時期の大きさ、早産で調整した後、効果推定値は、特に「高逆境」グループの女性で減少した。小児期に逆境を経験しなかった女性と比較すると、2型糖尿病発症の追加リスクは58%から23%に減少し、10万人年当たり18.6人ではなく、6.4人が追加されたことになる。推定リスクの減少の大部分は、親の教育レベルを調整した結果であった。
その結果、小児期の逆境を経て2型糖尿病を発症する相対リスクは、すべての群で男性より女性の方が低いことがわかった。また、絶対効果(10万人年当たりの糖尿病追加症例数)も男性より女性の方が低かった。ただし、幼少期に物質的困窮を経験した場合は、絶対効果は男女で同等であった。
本研究により、貧困、家族の病気や死、機能不全家庭などの小児期の逆境にさらされた人は、小児期に逆境をあまり経験しなかった人と比べて、若年期に2型糖尿病を発症するリスクが高いことが明らかになった。これらの知見は、この集団ベースの研究の規模が大きいこと、また選択バイアスや想起バイアスがないことによって強化されている。さらに、著者らは、親の教育水準と子どもの逆境経験との間には密接な関係があり、観察された関連性の一部を説明していると指摘している。
研究者らは、若年成人期に発症する2型糖尿病症例の一部は、小児期の逆境の根本的な原因をターゲットにした早期介入によって予防できる可能性が高く、子どもの生活への悪影響を軽減、あるいは取り除くことができると結論付けている。
[News release] [Diabetologia article]



