UCLAが機能別細胞選別技術を開発。創薬や生物学研究への応用に期待。

UCLAが機能別細胞選別技術を開発。創薬や生物学研究への応用に期待。

サイエンス出版部 発行書籍

40年程前から、製薬会社は遺伝子操作された細胞を小さな医薬品工場として使っている。このような細胞は、癌や関節炎などの自己免疫疾患の治療に使われる薬物を分泌するようにプログラムすることができる。標準的な実験室で単一の生きた細胞を素早く選別する新技術によって、新しい生物学的製剤の開発・製造に繋がるかもしれない。UCLAの研究チームは、「ナノバイアル」と呼ばれる微細なボール状のハイドロゲルコンテナーを用いて、細胞の種類や分泌する化合物、その量に基づいて細胞を選別する能力を最近実証した。
この研究は、2022年3月24日、学術誌『ACS Nano』に掲載された。この論文は「超並列単一細胞機能解析およびソーティングのための浮遊性ハイドロゲル・ナノバイアル(Suspendable Hydrogel Nanovials for Massively Parallel Single-Cell Functional Analysis and Sorting)」と題されている。この技術は、生物学の基礎研究を進展させる可能性もある。

本研究の責任著者であり、UCLA サミュエリ工学部のアーモンド&エレナ・ハラペチアン工学・医学部教授 であるディノ・ディカルロ 博士は、「この技術により、タンパク質コード化遺伝子の大部分を占める重要な生物学的過程について、科学界は新しい洞察を見出すことができる。私は、単細胞を生物学の量子限界と考えている。ナノバイアルは、その基本的な限界である単一細胞へのペトリ皿の進化なのだ。」と語った。

UCLAのカリフォルニア・ナノシステム研究所とUCLAジョンソン総合癌センターのメンバーでもあるディカルロ博士は、ナノバイアルを使うことで、細胞分泌物を測定するための他の機器の限界を克服することができると語っている。
より一般的な方法は、マイクロウェルプレートと呼ばれる小さなプラスチック容器を格子状に並べたものであるが、この方法では、ナノバイアルの持つ単一細胞を選別する能力に欠け、現在の技術では、分泌物を検出できるように細胞が十分に増殖するまでに通常数週間を要する。もう1つの方法は、数百万ドルもする装置で、世界でも数十の研究所にしかない。この装置は、1回の実験で約1万個の細胞の分泌物を測定し、生きた細胞を分類することができる。
この装置と比較すると、ナノバイアルは数百万個の細胞という非常に大きなスクリーニングを、わずかな費用で実施することが可能である。
ナノバイアルは非常に小さく、ティースプーン1杯分で2000万個もある。特定の種類の細胞を捕らえるためにカスタマイズされ、細胞の分泌物に付着して色光で光る分子で補強することができる。ナノバイアルはハイドロゲル(水中でその質量の約20倍を保持する高分子)で作られているため、細胞が本来持っている環境に比較的近いウエット環境を提供することができる。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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