AIが拓く創薬革命:クラミジアを「狙い撃ち」する新薬候補を発見!

薬が効かない「薬剤耐性菌」が、世界中で深刻な脅威となっています。このままでは2050年までに、薬剤耐性による死者数は年間1000万人を超えると予測されており、これはがんによる死亡者数を上回る数字です。この危機に立ち向かう鍵は、「敵」である病原菌だけを賢く攻撃し、「味方」である体内の有益な菌は守る、新しいタイプのナロースペクトラム(狭域)抗菌薬の開発にあります。 その喫緊の課題を象徴するのが、クラミジア・トラコマチスです。これは世界で最も一般的な細菌性の性感染症であり、女性の不妊症やトラコーマによる失明の主要な原因ともなっています。現在使用されているドキシサイクリンやアジスロマイシンといった治療薬は広域スペクトラム抗菌薬であり、有益な腸内や膣内の常在菌叢にまでダメージを与え、標的以外の微生物における薬剤耐性の発達を加速させてしまうという問題を抱えています。 多角的な創薬パイプライン この課題に対し、スウェーデンのウメオ大学と米国のミシガン州立大学による学際的な研究チームが、画期的な発見をしました。ウメオ大学のバーバラ・S・シックスト(Barbara S. Sixt)博士が責任著者を務めたこの研究は、2025年4月29日にオープンアクセスジャーナル『PLOS Biology』に掲載されました。論文タイトルは「A Multi-Strategy Antimicrobial Discovery Approach Reveals New Ways to Treat Chlamydia(多角的戦略による抗菌薬探索アプローチが明らかにするクラミジアの新たな治療法)」です。研究チームは、以下の要素を組み合わせた多角的な創薬パイプラインを開発しました。 ・36,785種類の医薬品様化合物を対象としたハイスループットな実験的スクリーニング ・画像ベースの表現型解析と生存
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Edited by Michael D. O'Neill
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