National Institutes of Health (NIH) の研究チームは、ゲノム・シーケンシングを使って抗生物質耐性の (Klebsiella pneumoniae) 肺炎桿菌シーケンス・タイプ258 (ST258) の進化を追跡調査した。この菌は院内感染症を引き起こす菌としてごく一般的である。以前には、ST258 K. pneumoniae菌株は単一の祖先から広がったものと思われていたが、NIHの研究チームの研究から少なくとも2つの異なる系統があることが証明された。
しかも、この2つの系統の主な違いが、細菌がヒトの免疫系と最初に接触する外膜と呼ばれる組織の生成に関わる遺伝子にあることを突き止めた。2014年3月17日付PNASオンライン版に掲載されているこの研究結果は、公衆衛生上大きな脅威になっている耐性菌感染症の診断、予防、治療の新しい方法を開発する大きな助けになることが考えられる。ST258 K. pneumoniaeは、カルバペネム耐性腸内細菌 (CRE) に分類される細菌の中でもヒトの感染症を起こす病原体としてもっとも一般的なもので、アメリカでは年間何千人もの人がこの細菌感染を発症し、600人ほどが亡くなっている。
CRE感染のほとんどは病院や長期ケア施設で起きており、CREとは関係のない疾患ですでに体が弱っていたり、特定の医療を受けている患者が発症している。この新しい研究では、NIHのNational Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID) の研究者と共同研究者が、ニュージャージー州の病院の2人の患者から採取したST258 K. pneumoniae株のゲノムの完全なシーケンシングを行った。この対照グループ・ゲノムをさらに83個のST258 K. pneumoniae分離試料で行った遺伝子シーケンスと比較し、研究チームは、この耐性細菌が主に2つの菌株系にはっきりと分かれており、それぞれ独自の進化史をたどったことを突き止めた。
さらに分析を進めた結果、この2つのグループのもっとも顕著な違いは、細菌の外殻の生成に関わる遺伝子を含んだゲノムの「ホットスポット」1箇所にあることを突き止めた。
研究チームは、細菌がヒトの免疫系をすり抜ける上でこの遺伝子の違いがどれほど関わっているのかを調べる計画を進めている。
また、この研究成果は、ゲノム・シーケンシングで相当量の情報が得られることを示している。
さらに研究チームは、細菌伝播を監視し、正確に追跡する上でシーケンシングの重要性を立証して見せた。
この研究の共同研究者には、NIAID出資援助を受けるPublic Health Research InstituteおよびNew Jersey Medical School-Rutgers Universityの研究者、Case Western Reserve University、Houston Methodist Research Institute and Hospital Systemに加えて、比較ゲノム・シーケンシング作業を行ったNIAIDのRocky Mountain Laboratoriesの研究者がいる。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Sequencing Reveals Genetic Diversity in Hospital-Acquired, Antibiotic-Resistant Klebsiella



