眼の神経細胞が正常に機能するにはビタミンCが必要である。2011年6月29日号のJournal of Neuroscience誌に発表されたこの新たな発見は、ビタミンCが他の脳機能にも必要な要素である可能性を示唆している。この発表をしたのはオレゴン医療大学(OHSU)の研究チームと共同研究グループである。「網膜の細胞は、比較的高用量のビタミンCが無ければ正常に機能しないという事が分かったのです。」と、OHSUのボラム研究所の科学者で今回の研究の共同執筆者、ヘンリーク博士は語る。
更に「網膜は中枢神経系の一部ですから、今回の発見は、ビタミンCが脳の至る所で今まで知られていなかった大事な役割を果たしているかもしれないという事を示唆しています。」と指摘する。
脳にはGABA型レセプターという特別なレセプターがあり、脳の細胞間の高速情報伝達を調節している。GABA型レセプターは脳の興奮性神経系を抑制するためのブレーキとしての役割を果たしている。OHSUの研究チームは網膜細胞内のこのGABA型レセプターは、ビタミンCの供給が無いと正常に機能しなくなる事を発見した。
「網膜細胞が比較的アクセスしやすい脳細胞であると考えれば、脳の他の部分にあるGABAリセプターも正常に機能するためにはビタミンCを必要とする事が予測されるのです。」とフォン・ゲルスドルフ博士は言う。「また、ビタミンCは抗酸化物質であるため、基本的にレセプターや細胞を早期細胞死から守る役割も果たしています。」とフォン・ゲルスドルフ博士は続ける。
脳内でのビタミンCの役割は未だ解明されていないが、人間の体内でビタミンCが不足していても脳には最後までビタミンCが残る事は分っている。「脳が一番ビタミンCを不足させてはならない場所であるようです。そしてこの発見は、なぜ壊血病(ビタミンC不足により起こる病気)があのように作用するのかを解明する糸口になると思われます。」とフォン・ゲルスドルフ博士は説明する。壊血病の最も多い症状は鬱状態である。これは脳のビタミンC不足によるものであろう。
今回の発見は他の病気にも関連することがあるかもしれない。例えば緑内障やてんかんは、網膜と脳にある神経細胞の機能障害によって起こるが、これらの機能障害はGABAレセプターが正常に機能しない為、神経細胞が過剰興奮状態になるからだと考えられる。「例えば緑内障になる可能性の高い人にはビタミンCを豊富に摂取する食事療法を行なえば網膜の神経の保護に役立つかもしれません。これらはまだ推測であり、解明すべき事も多くあります。しかし今回の研究は、新しい仮説を基に有望な治療法を確立する道へ導いてくれるでしょう。」とフォン・ゲルスドルフ博士は語る。
OHSUのボラム研究所フォン・ゲルスドルフ研究室の研究者と学生は基礎神経科学の研究を専門としている。本研究は人間と生物学的構造の似ているキンギョの網膜を使って行われた。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Scientists Discover New Role for Vitamin C in Retina, Possibly Brain



