腸内免疫の鍵はどこに?結腸の特定領域が免疫シグナルに支配されることを解明

腸内免疫の鍵はどこに?結腸の特定領域が免疫シグナルに支配されることを解明

サイエンス出版部 発行書籍

腸の適応力を解明——空間的遺伝子発現マップが示す臓器の柔軟性と免疫制御の仕組み 腸は、栄養や水分を吸収すると同時に、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)との健康的なバランスを保つという精巧な機能を担っています。しかし、セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病などの疾患では、このバランスが腸の特定の領域で崩れ、病態を引き起こします。これまで、腸の各領域がどのように環境変化に適応し、それが疾患によってどのように破綻するのかは十分に理解されていませんでした。 今回、マサチューセッツ工科大学(MIT)・ハーバード大学ブロード研究所(Broad Institute of MIT and Harvard)およびマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital, MGH)の研究チームは、マウス腸全体の遺伝子発現と細胞の状態・位置をマッピングし、炎症などの変化に対する腸の応答を解析しました。 その結果、腸の異なる領域で細胞タイプや状態が厳密に制御されていることが明らかになり、特に結腸の一部が免疫シグナルによって支配されていることが判明しました。この研究成果は、2024年11月20日付の科学誌「Nature」に「Spatially Restricted Immune and Microbiota-Driven Adaptation of the Gut(腸の空間的に制限された免疫・微生物叢による適応)」というタイトルで発表されました。 腸の空間的構造を再評価する新たな研究アプローチ 「腸、とりわけ結腸は何十年にもわたり研究されてきましたが、今回のような解析はこれまで行われていません。この成果は、既存の研究を再評価するきっかけとなり、今後の研究に新たな視点をもたらすものです」と、本研究の筆頭著者の一人であるトゥーフィック・マヤッシ博士(Tou

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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