マイクロRNAは学習機能を制御する制御因子でありアルツハイマーにも関与しそうだ
サイエンス出版部 発行書籍
タンパク質は、多くの機能を持つ、細胞の分子マシーンのようなものだ。分子材料の運搬、物質の切断やシグナルの伝達など、分子生物学の分野で長年研究対象となっている機能を有している。しかしこの20年新たに別の種類の重要な分子が注目されるようになってきた。それが、マイクロRNAを含む小サイズのRNAであり、現在では、マイクロRNAが細胞機能の制御に重要な役割を演じる事が明らかになっている。 「ひとつのマイクロRNAが300-400個のタンパクを制御しているようです。マイクロRNAのような分子は細胞の状態の変わり目にスイッチとして働くと考えられています。」とドイツ神経退化疾患研究所(DZNE)の研究者でゲッチンゲンDZNE所長のアンドレ・フィッシャー教授は語る。 彼の研究チームは学習作用に関与するマイクロRNAを同定し、更にそれがアルツハイマー病の重要な役割を担っているということだ。彼らはアルツハイマー病モデルマウスに過剰に発現する「miRNA 34C」と呼ばれるマイクロRNAを低減させると学習能力が回復することを実証した。更にはアルツハイマー病の診断と治療に重要であると考えられる標的分子も同定した。本研究はゲッチンゲン欧州神経学研究所、ゲッチンゲン大学、DZNEミュンヘン、そしてスイス、アメリカ、ブラジルから参加した研究者たちによる共同研究として実施された。研究結果はEMBO誌2011年9月23日オンライン版に発表され、miRNA 34Cは「多重並行シーケンス法」と呼ばれる複雑な方法で行われた。この技術を用いてフィッシャーと彼のチームは、脳内で学習機能を司る部位である海馬に発現するRNA構造の完全型を解明し、脳全体のRNAと比較検討を行った。彼らは海馬内のmiRNA 34Cが学習フェーズの2-3時間後に増加することを実証した。「私たちはmiRNA 34Cが、学習過程で生じる
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