世界最大の遺伝子研究所である中国BGI研究所が、ネイチャー・バイオテクノロジー誌2012年2月12日付けオンライン版で、ヒトセルラインのRNAシーケンスデータを精査し、RNAが広範に修正をかけている事を実証した。そしてこの重要な転写後の修正イベントを同定するには、大変高度な解析方法が必要となることも明らかにした。RNAの修正については良く知られているが、詳細はまだ不明である。
DNAからRNAへ転写された後に、ヌクレオチドの若干の修正が行なわれるということだ。このステップは、遺伝情報を再コード化する際の転写後イベントとして、細胞RNAの固有の特徴の多様性と柔軟性を創製するために、必要不可欠なものである。
こうしてRNAエディティングは、翻訳されたタンパクの構造と機能を研究する「ポストゲノムシーケンス」の時代において、重要な分野となってきた。つまり、遺伝子研究分野で、その重要性は益々大きくなってきているのだ。昨年サイエンス誌に発表された論文(2011年5月19日、リー等)では、ヒトトランスクリプトーム解析において、対応するmRNAとDNAとに大きな配列の違いが見つかっている。これが驚愕すべき発見である理由は、「RNAエディティング」に未だ不明なメカニズムが存在するにせよ、「RNAエディティング」の事実はセントラル・ドグマを外れ、遺伝子変異に対する私達の理解を覆すものだからだ。
しかし、この考え方は多くの研究者が疑義をはさみ、解析技術や学術的厳格性、例えばシーケンスエラーやマッピングミスについて、多くの議論が生じた。そこで最新のBGI研究所の研究チームが提示したのは、RNAエディティングのような分野における研究を行なうに当たって問題となる課題に対する、より厳格な研究方法であった。
研究チームは、中国漢民族の男性由来のリンパ芽球様セルラインをサンプルとしたRNA-seqによるシーケンス解析から、全トランスクリプトームのデータを獲得した。RNA-seqとは、最近トランスクリプトームのプロファイリングの為に開発された、「全トランスクリプトーム・ショットガン配列解析法」と呼ばれる方法である。この方法は、詳細シーケンスを行なうに当たり、スループット、バックグラウンド、感度、再現性などの点で優れた結果を保証する。2009年のネイチャーReview Geneticsでは、RNA-seqを評して、「トランスクリプトーム解析の革命的な方法」と書かれている。「私達はRNA-seq法を使って、転写後の修正イベントの同定を行ない、ヒトRNAの修正箇所を見つけるコンピュータによる包括的方法を開発しました。」と本論分の主筆でBGI研究所・研究&共同開発部副所長であるジユー・ペン博士は語る。
この方法では、同一固体から得た品質評価をパスしたRNAとDNAの配列の違いを解析し、ゲノムと全トランスクリプトームのデータを獲得し、広範なRNAエディティングの同定を行なうものである。この方法−彼らはパイプラインという表現をしている−を用いて、BGI研究所の研究チームは、22,688個のRNAエディティングイベントを同定し、ほとんどの修正イベント(〜93%)において、RNAに対するアデノシン 脱アミノ酵素活性(ADAR)として修正メカニズムが既知である、アデノシン(A)が翻訳時にはグアノシン(G)と読まれるイノシン(I)に置き換わっていることを明らかにした。更に同チームは、マイクロRNA(miRNA)における44個の修正イベントを同定し、RNAエディティングとmiRNA介在調節とが関連していることが示唆されている。研究チームは他のタイプのヌクレオチドも修正される事を実証したが、その頻度は上記に比べると大変低い。
「この研究が秀でている点は、マルチフィルター分子のパイプラインを用いていることです。マルチフィルター機能によって、RNAエディティングイベントの同定に際して擬陽性のデータを調整し、或いは排除することが出来ます。それによって、RNAエディティング解析において、より正確で効果的な方法を採用出来るのです。私達の次の目標は、この新しい方法論を大規模詳細シーケンスに適用し、”エディトーム”のもっと包括的な解析とプロファイリングを行なうことです。それには勿論、生理学的に重要なサンプルも加える予定です。」とペン博士は語る。「ヒトトランスクリプトームにおいて広範なRNAエディティングを同定することが、そこでの全てのイベントを検知する為の非常に有益な方法であり、人間の成長や病理学的に正常である状態の理解を進めるために、必要不可欠であるのです。私達は新しいアプローチを毎日続けており、近い将来目的を達成出来ると考えています。」と、BGI研究所長であるユン・ワン博士は話す。
[BioQuick News: BGI Researchers Discover Extensive RNA Editing in a Human Transcriptome "> [Press release">



