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細胞老化の謎を解く長命なタンパク質を発見

細胞老化の謎を解く長命なタンパク質を発見

なぜ細胞は老化するのか。これは生物学における謎の一つであるが、今回ソーク生物学研究所の研究チームが、脳内で起こる老化プロセスの謎を解明する脳細胞の構成要素の弱点を発見したと報告した。研究チームが発見したのは、ELLPs (Extremely Long-Lived Proteins) と呼ばれる非常に長命なタンパク質で、これはニューロンの核の表面で見られる。ほとんどのタンパク質の寿命が合計2日以下なのに対し、ラットの脳内で発見されたELLPsはラットとほぼ同じ年齢であることが分かった。本研究は2012年2月2日付けのサイエンス誌に記載され、これほど長命なタンパク質を含む必須細胞内マシーンが発見されたのは今回が初めてである。本研究は、タンパク質が置換されることなく生涯にわたって持続するものであることを示唆している。ELLPsは核表面の輸送チャンネルを構成している。このチャンネルは出入りする物質をコントロールするゲートのようなものである。ELLPsが時間とともに消耗しなければ、このタンパク質が長命であることはメリットである。

しかし、ELLPsは他のタンパク質と異なり、異常な化学修飾や損傷を受けた際に、新しいものに入れかわることはない。そのためELLPsが損傷を受けると、毒素から細胞核を保護するための三次元輸送チャンネルの能力を弱める場合があると、本研究を率いたソーク大学分子細胞生物学研究所教授、マーチン・ヘッツァー博士は推測する。結果、これらの有害物質は細胞のDNA、そして遺伝子活性を変化させ、細胞老化を引き起こすことが示唆されている。エリソン医学基金およびグレン医学研究基金から資金提供されているヘッツァー博士の研究チームは、NPCと呼ばれるこの輸送チャンネルの老化における役割を研究している、世界で唯一のグループである。

DNA損傷を起こす有害物質が核内に侵入出来ることは、哺乳類のNPCの弱点である。以前の研究で、遺伝子発現の変化が老化現象の起因であることは解明されていたが、ヘッツァー研究チームがこの弱点を発見するまで、化学業界において遺伝子変化がどのように起きるのかを説明する確たる要素は存在していなかったのである。「老化の 基本的機能の定義は、心臓や脳などさまざまな臓器における機能的能力の低下です。この低下は臓器の構成細胞内のホメオスタシス、または内部安定性の劣化により起こります。最近行われたいくつかの研究は、タンパク質のホメオスタシスの崩壊と細胞の機能低下と関連づけています。」と、ヘッツァー博士は語る。ヘッツァー博士と研究チームが発表した本研究結果は、ニューロンの機能低下が時間とともに劣化するELLPsに由来する可能性を示唆している。

「ニューロン以外の細胞の多くは、タンパク質のターンオーバーの過程で障害のある部分を新しいコピーと交換し、タンパク質の機能低下を阻止します。我々の研究結果は、核膜孔の劣化が老化現象の一部で、遺伝子発現プログラムなどの核機能の低下に繋がるのではないか、と示唆しています。」と、ヘッツァー博士は説明を続ける。本研究は、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経性疾患の分子原因の理解に役立つかもしれない。ヘッツァー博士と研究チームは以前行った研究で、年をとったラットのニューロン核内に、細胞質から起源したと考えられる大きなフィラメントを発見した。このようなフィラメントはパーキンソン病など様々な神経性疾患と関連しているが、置き違えられた分子が疾患の原因なのか結果なのかは未だ定かではない。また以前の研究で、年をとった健康なラットのニューロンNPCにおける老化関連の機能低下も記録している。ラットおよびマウスはヒトの生物学を研究するのに適した実験モデルである。

ヘッツァー博士の研究チームはソーク研究所の研究員およびスクリップス研究所化学生理学教授、ジョン•イェイツ•?氏を含む。3年前、NPCが老化および特定の神経性疾患の発症に関連しているのか否かの研究を始める時、ヘッツァー博士は化学業界の一部のメンバーからそのような大胆な研究は物理的にも金銭的にも行うのが難しいと忠告を受けていた。しかしヘッツァー博士の決心は固く、研究は開始された。基金無しでは本研究の結果までたどり着くことは出来なかっただろう、とヘッツァー博士は語る。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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