なぜ無関係な植物が同じ“毒”を作るのか?その巧妙な仕組みと創薬への応用

進化の系統樹ではるか昔に枝分かれした、全くの“他人”のはずの2つの植物。しかし、不思議なことに、それらは全く同じ「毒」を作り出す能力を持っていました。これは単なる偶然の一致なのでしょうか、それとも生命の進化に隠された、驚くべき法則があるのでしょうか?この進化のミステリーを解き明かす研究が、植物の巧妙な生存戦略と、未来の医薬品開発への新たな道筋を照らし出しました。 植物は膨大な種類の天然物を生産します。多くの植物天然物は祖先特異的であり、特定の植物科、時には単一の種にしか存在しません。しかし興味深いことに、同じ物質が遠縁の種で見つかることもあります。多くの場合、最終産物しか知られておらず、これらの物質が植物内でどのように生産されるのかは、ほとんど解明されていませんでした。 トコンアルカロイドは、薬用植物として知られる2つの遠縁の植物種に見られます。一つはリンドウ科に属するトコン(Carapichea ipecacuanha)、もう一つはミズキ科に属しアーユルヴェーダで知られるウリノキ(Alangium salviifolium)です。これまでの研究で、両種がトコンアルカロイドを生産することは知られていました。特に、トコンの抽出物(「吐根シロップ」)は、1980年代まで(特に北米で)中毒時の催吐薬として薬局で広く用いられていました。その有効成分はセファエリンとエメチンであり、両者とも前駆体であるプロトエメチンから誘導されますが、植物がこれらをどのように生産するのかは、ほとんどわかっていませんでした。わずか2つの小規模な研究でトコンのいくつかの酵素が同定されていましたが、ほとんどの酵素は未知であり、ウリノキに至っては酵素が全く知られていませんでした。 今回の研究の筆頭著者であり、ドイツのマックス・プランク化学生態学研究所(MPI)天然物生合成部門のプロジェクトグループ
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Edited by Michael D. O'Neill
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