肌の老化防止のために皮膚に塗ったり、運動選手が疲労回復のために服用されたりするビタミンEの本来の身体に対する機能が最近の研究によって明らかになってきた。ビタミンEは強力な酸化防止剤として多くの食品に使用されており、細胞膜の損傷を修復する作用を助ける機能がある。細胞膜は外部の刺激から細胞を護り、細胞への物質の出入りをスクリーニングする機能を有しているが、このあたりの本来的な機能がジョージア健康科学大学(GHSU)の研究チームによって明らかにされ、2011年12月20日付けのネイチャー・コミュニケーション誌に発表された。
食事をしたり、運動したりする日常の活動によって、細胞膜は様々な損傷を被り、ビタミンEがその修復に重要な役目を果す事が最近の研究で解ってきた。もし筋肉細胞が修復されなければ、筋肉は筋ジストロフィーで観察されるのと同じように、衰弱し死滅する。細胞膜の修復が覚束無い事に起因する他の疾病例には糖尿病があり、筋肉の脆弱化が主訴の一つとなっている。「特に意識しなくても、私達は毎日ビタミンEを体の中で使っていますが、それがどのような役割なのかは、よく知られていません。」とGHSUの細胞生物学者で本論文の主筆であるポール・マックネール博士は語る。少なくとも役割の一つは明らかになったのだ。「1世紀前の動物実験ではビタミンE欠乏症が筋肉疾患に関係していることは分かったのですが、それがどのようにして起こるのかは今まで謎のままでした。」と、マックネール博士は言う。


細胞膜の修復不足が筋消耗や筋壊死を引き起こすということが、マックネール博士がビタミンEの研究に興味を持った理由である。ビタミンEが修復を助ける方法は複数存在する。一つ目は酸化防止剤として、体内での酸素の使用に由来し、修復作用を阻害する副産物の産生を防ぐ事に役立つ。二つ目は、脂溶性の性質により、細胞膜内に潜り込む事が出来るので、フリーラジカルからの攻撃を防ぐ事が出来る。三つ目は、細胞膜の主要成分であるリン脂質を保持するのに役立つため、損傷部位を修復する機能を促進する。例えば、運動をすると細胞の動力室であるミトコンドリアは通常以上の酸素を燃やす。「この結果として、活性酸素種が生産されるのは避けられません。」と、マックネール博士は説明する。運動の物理的な力が細胞膜を損傷するのである。ビタミンEは酸化物質の攻撃を受けても、細胞膜の損傷を修復しながら状態の維持を行なう。フリーラジカルを生成する過酸化水素を使用して運動時の状態をモデル化したところ、骨格筋細胞の損傷はビタミンEを投与しなければ治癒しないことが明らかになった。



 次のステップは、ビタミンE欠乏症の動物の細胞膜修復を調べるものであり、2つの国立衛生研究所からグラントを受けている。マックネール博士は、さらに糖尿病の細胞膜修復不全の研究も想定している。元GHSU大学院生アンバー•C•ハワード博士は、1型および2型糖尿病の動物モデルから採取した細胞が不完全な修復機能を持っている事を、最近のDiabetes誌にて示した。ハワード博士は、高グルコース溶液に細胞を8−12週間浸漬することによって、修復不全が惹起される事を発見した。また、活性酸素種のレベルが糖尿病で上がることも証明されている。ネイチャー•コミュニケーション誌は、糖尿病の動物モデルにおけるビタミンEの治療がいくつかの膜修復能力を復元することを示した。また培養系の実験では、ビタミンEに生物学的活性が極似している化合物が、高グルコースによる細胞膜修復不全を改善し、損傷後の細胞の生存率を高めることがわかった。

 そして今、マックネール博士は糖尿病の動物モデルを用いて、高度の糖鎖修飾を防止する研究を計画している。(タンパクに高度のグルコース付加が成されれば、細胞膜の修復を妨げる事を、自身の研究で明らかにしている。)高度の糖鎖修飾による細胞膜の修復不全を改善する化合物は、動物培養細胞系レベルでは、既に完成されている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Scientists Discover an Innate Function of Vitamin E

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