がん転移に関わる細胞外基質タンパクを突き止める
サイエンス出版部 発行書籍
がん死の90%は原発病変から体の他の部分に広がったがんが原因になっている。これを転移と呼んでおり、転移するがん細胞は周辺の細胞から離れ、組織を構成している足場からも離れて単一で移動しなければならない。MITのがん生物学研究チームは、この組織構造の細胞外基質と呼ばれるタンパク質ががん細胞の脱出を助けていることを突き止めた。 チームは、非常に転移性が高く、しかも浸潤性も高い腫瘍の周辺のタンパク質を何十種類と洗い出し、そのうち4種類のタンパク質が転移のプロセスに不可欠であることを発見した。この発見に基づいて転移しやすいタイプのがんを判定する検査法の開発も考えられ、さらには治療がきわめて難しい転移がんの治療標的を突き止められるようになることも考えられる。MITのKoch Institute for Integrative Cancer Researchのメンバーであり、この研究チームを指導したDr. Richard Hynesは、「問題はこれまでの抗がん剤はすべて原発性がんを対象にしていることで、一旦転移が進むとほとんど打つ手がないというのが現実だ。原理的にはこの細胞外基質タンパクを標的にすれば転移の防止も可能なはずだ。まだまだ実現は遠いが不可能ではない」と述べている。 この研究論文は3月11日付「eLife」オンライン版に掲載され、Koch Instituteのポスドク研究員、Dr. Alexandra Nabaが筆頭著者になっている。他の著者として、Broad Institute, Proteomics PlatformのDirectorのDr. Steven Carr、Broad Instituteの研究員のDr. Karl ClauserとKoch Instituteの研究員のDr. John Lamarが名を連ねている。細胞外基質は大部分が生体組織を構造的に支え
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