細胞運動性司るタンパク質でがん転移阻止の可能性
サイエンス出版部 発行書籍
University of Pennsylvania, Perelman School of Medicineの生理学教授を務めるRoberto Dominguez, Ph.D.は、「細胞の運動性は生命の基本原理であり、細胞はすべて運動能力がある」と述べている。運動性とはあくまでも細胞空間的な尺度であるが、傷の治癒、血液凝固、胎児の成長、神経結合、免疫反応その他様々な機能にとって必要な機能である。 しかしながら、この運動性も、がん細胞が腫瘍から飛び出して移動し、他の組織に定着して増殖し始めた場合にはがんの転移と呼ばれ、非常に有害な動きである。2014年3月2日付でNature Structural & Molecular Biology印刷版に先立ってオンライン版に掲載された研究論文で、ポスドク研究員のDavid Kast, Ph.D.や同僚のDominguez研究チームは、細胞運動性を司るIRSp53と呼ばれるタンパク質が休止状態と活性状態との間で調節される機序とがん細胞の転移への関わりを明らかにしている。Dr. Kastは、「研究ではIRSp53が細胞の運動機構に結合する過程を詳しく調べた」と述べている。 Dr. Dominguezは、「IRSp53はまず糸状仮足の形成から始める。これは細胞が移動する時に足のように突き出す部分で、これによって細胞は尺取り虫のように伸びた糸状仮足が細胞を引きずって移動する」と述べている。次に細胞の最後尾が、筋肉収縮に似た細胞骨格のアクチンとミオシンの収縮によって糸状仮足の方向に移動する。細胞はその細胞膜を進行方向に伸ばし、たとえば他の細胞など触れた物体に貼り付き、細胞本体を移動させ、最後に最後尾をはがすようにして糸状仮足方向に前進する。そこからさらに同じ動作を繰り返して前進する。IRSp53タンパク質には、BARドメイン
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