抗体の実験操作、温度設定は?


サイエンス出版部 発行書籍

今夏2015の暑さは異常と言ってもいいほどで外を歩くのが怖かったですね。猛暑日にエンジニアが駆け込む場所はサーバールームという記事を見て大学在職時の実験室を思い出しました。大きなフロアには低温室があって真夏に出勤したときはまっすぐここに駆け込んで涼んだものです。   さて今回は、抗体に関わる実験をするときに、温度をどれくらい気にするかという話題です。抗血清から抗体をアフィニティー精製するときは、カラムへの目的抗体の結合と洗浄までは室温でかまわないです。 そして、pH を下げて抗体を溶出しアルカリを添加して溶出画分を中和するところは氷漬け(0℃)です。抗体によっては抗原と離したときに構造が不安定になるからです。 これは温度を下げるだけで良いとは限りませんが、念のため低温にするのが無難です。抗体を使って抗原のたんぱく質あるいは相互作用分子を単離したいときは、ずっと低温がよろしいです。具体的には、低温室でアイスバケットに氷を入れ、カラムやチューブを氷漬けにします。低温室が利用できないときは、サンプルを氷に埋め込むくらいの気をつけ様がよろしいです。温度を下げる理由は、サンプルに夾雑するプロテアーゼによるたんぱく質分解を極力おさえるためです。 もちろん阻害剤のカクテルを入れておくことは良いですが、とにかく0℃にちかいところで実験をします。

大海 忍

このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。

抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任

【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)

KAKEN