「固定」ということば


サイエンス出版部 発行書籍

実験操作の「固定」についてです。「固定(fixation)」はもともと、顕微鏡観察用の標本を作成する際に形態を保持するために加熱、凍結、薬品などで処理することをいいます。この過程でたんぱく質は変性・不溶化することが多いです。  抗体を用いた顕微鏡観察やフローサイトメトリーでは、サンプルの固定が必要になることがあります。   もちろんここで、抗原抗体の結合が損なわれてはいけないので、固定化条件は比較的温和で、パラホルムアルデヒドなどが多用されます。とはいっても、試薬の濃度や反応温度・時間など、どう設定したらよいか迷うかと思います。手軽な方法を紹介しておきます。 抗原を含むサンプルを SDS-PAGE で分画して PVDF 膜などに転写したイムノブロット用の膜をたくさん用意します。イムノブロットは SDS でたんぱく質を一度変性はさせていますが、いわゆる固定操作はしていませんので、この膜をさまざまな固定条件で処理して最後に PBS あるいは TBS で洗浄、そのあとは通常のイムノブロットの操作をして抗体の結合を調べれば良いわけです。もちろん、顕微鏡用の標本などと全く同じ環境ではありませんが、条件絞り込みの参考にはなります。

大海 忍

このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。

抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任

【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)

KAKEN