抗ペプチド抗体について
サイエンス出版部 発行書籍
たんぱく質に対する抗体を作るときは、免疫原としてそのたんぱく質が必要です。以前は、たんぱく質を精製・純化しましたが、遺伝子が単離されているときはリコンビナントたんぱく質を用いることが多くなりました。そして1990年代に入ってペプチド合成の技術が普及しはじめると、たんぱく質の一部分を化学合成して免疫原に使う抗ペプチド抗体も選択肢のひとつに加わりました。 抗体分子はたんぱく質を構成する長いポリペプチド鎖のほんの数〜十数残基の領域に結合しますので、これくらいの長さのペプチドが合成できれば良いわけです。抗ペプチド抗体の技術は、抗原たんぱく質の特定の部分を狙って抗体を作成するので、モノクローン抗体に近い性質の抗体を得ることができ、リン酸化などたんぱく質の翻訳後修飾を識別する抗体の作成にも応用可能です。「抗ペプチド抗体はちょっと難しいし、あまりよい抗体ができないらしい」という声をときどき耳にします。いざ抗原ペプチドの設計をする段階で、遺伝子から翻訳される一次構造を眺めてどの部分のペプチドを抗原にしたらよいか迷ってしまうかもしれません。 たしかに、抗体の良し悪しは、抗原ペプチドのデザインに大きく依存します。簡単にポイントを言いますと、もとのたんぱく質がフォールディング(リフォールディング)したときに分子の外側に位置する部分を抗原ペプチドにすること、もうひとつは免疫原になったペプチドがもとのたんぱく質と同様なプロセッシングを免疫動物内でうけることです。
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著者: 大海 忍
このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。
抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任
【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)