LC/MSやGC/MSで得られるクロマトグラムの種類
サイエンス出版部 発行書籍
質量分析屋の高橋です。暫く投稿をサボってしまい、大変失礼しました。今回は、LC/MSやGC/MSにおいて、マススペクトルを取得するモードで測定した時に得られるクロマトグラムの種類について説明します。 添付した図は、上から(a)TICC, (b)BPIC, (c)高強度のバックを除いたm/z範囲で作成したクロマトグラム、(d)ある成分イオンのm/z値を設定した抽出イオンクロマトグラム、を示しています。試料は天然物の抽出液です。 ・TICC:全イオン電流クロマトグラム(total ion current chromatogram) 少し前まではTIC(全イオンクロマトグラム、total ion chromatogram)と呼んでいましたが、2013年質量分析関連用語についてのIUPAC勧告に基づき、日本質量分析学会は用語集を改定し、全イオン電流クロマトグラムと呼ぶようになりました。TICは、測定するマススペクトル上に観測される全イオン強度の和を、時間軸に対してプロットした二次元チャートと言う定義でした。しかし、この二次元チャートの縦軸は、イオンの強度を直接プロットしている訳ではなく、イオンが検出部によって変換された後の電流値をプロットしているため、ionとchromatogramの間に電流(current)が入ったと言う経緯があります。マススペクトルを取得するm/z範囲の下限値を小さく設定し過ぎると、バックグランドイオン強度が増加するため、TICCのS/Nが低くなり、TICC上でピークが確認し難くなります。 GC/MSの場合、強度の高いバックグランドイオンは、H2O由来のm/z 18、N2由来のm/z 28、O2由来の32などが主であるため、マススペクトルの取得m/z範囲を35からに設定すると、S/Nの良いTICCが得られます。m/z 50~の設定にする
著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)