LC-MSイオン導入細孔の電圧設定と付加イオン強度との関係
サイエンス出版部 発行書籍
質量分析屋の高橋です。以前のブログで、イオン導入細孔の設定電圧とマススペクトルパターンの変化について書きました。イオン導入細孔は、ESIやAPCIなどの大気圧イオン源において、大気圧で生成したイオンが真空領域に入っていく時に最初に通過する細孔です。図1をご参照下さい。 メーカーによって名称は異なり、cone, orifice, transfer tube, heated capillaryなどと呼ばれています。その後に続く差動排気部にイオンを送り込むために、数十V程度の電圧が印加されています。その電圧を高く設定すると、細孔を通過した後にイオンが残存ガスと衝突してフラグメンテーションを起こす(In-source fragmentation)ことは、以前のブログに書きました。 その際、付加イオンの強度比が変化するのですが、今日はそのことについて書いておきます。WatersのQTOF-MS(Synapt G2-XS)でConeの電圧を30 V, 50 V, 70 Vに設定した時の、ロイシン・エンケファリンのプロトン付加分子([M+H]+)付近のm/z領域のマススペクトルを図2にしまします。 このブログにも書いた通り、ロイシン・エンケファリンの[M+H]+(m/z 556)は30 Vの時に最大強度を示し、電圧を上げると共に強度は減少し、フラグメントイオンが生成します。この時、付加イオンは[M+H]+に対して[M+Na]+と[M+K]+が相対的に増加しています。NaイオンやKイオンが付加する事でイオンの構造が安定化するために、高いCone電圧の時に相対強度が大きくなると言う現象が起こります。 例えば通常の条件設定でLC/MSを行い、未知成分のマススペクトルで顕著なピークが1本しか観測されずにイオン種が決定できないような時、この電圧を高めに設
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)