m/z とは?
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは! 質量分析屋の髙橋です。第一回目、第二回目共に、マススペクトルの横軸であるm/zについて触れています。今回は、このことについて、もう少し掘り下げて考えてみます。 日本質量分析学会のマススペクトロメトリー関係用語集1) において、m/z は以下のように定義されています。 「m/zは、イオンの質量を統一原子質量単位で割り、さらにイオンの電荷数で割った無次元量。表記に際しては、必ず小文字の斜体(イタリック体)で、空白を挿入しないで記述する。」 (バイオマーケットjpの仕様上、本ページのタイトル部分のみイタリック体になっておりません。ご了承ください。) また、m/z の定義とその使用法に関する論文2) の中に以下の記述があります。 「一価イオンの場合、統一原子質量単位で表した質量の値とm/zの値は一致します。」 私は、m/zの表記について考えていた時、この論文2)の記述を読んで不思議に思いました。「一価イオンの場合、統一原子質量単位で表した質量の値とm/zの値は一致する」のであれば、「mは統一原子質量単位で表したイオンの質量」としても良いのではないかと。 m/z が無次元量である必要性は個人的には特に感じないのですが、m/z に質量の単位が残ってしまっては不具合が起こるということは、以下のような多価イオンのマススペクトルを考えると良く理解できます。 これはタンパク質を正イオンESIで測定した時のマススペクトルですが、このように多価イオンが観測されている場合、m/zに質量の単位が残っているとおかしなことになります。 このことから私は、m/zのmは、イオンの質量を統一原子質量単位で割ることで質量の単位をなくす必要があるのだと理解しました。引用文献1) マススペクトロメトリー関係用語集、日本質量分析学会用語委員会編、国際文献印刷社、p. 65 (2
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)