マススペクトルから何がわかる?
サイエンス出版部 発行書籍
マススペクトルは質量分析によって得られる最も基本的なデータであり、縦軸を信号強度、横軸をm/zで表した二次元表示です(mとzはそれぞれイタリック体で表記)。 ここで、mはイオンの質量を統一原子質量で割った値、zはイオンの電荷数を表しています。 図1と2に、異なる化合物を異なる条件で測定したマススペクトルを示します。 マススペクトルには、大きく分けて①分子構造を保持したイオンと、②分子構造の中の結合が開裂して生成したフラグメントイオン、の二種類のイオンが観測されます。 分子構造を保持したイオンは、例えば正(+)イオン検出条件においては、分子から電子が取れる、分子にプロトン(H+)やナトリウムイオン(Na+)が付加する、などによって生成します。 分子から電子が1つ取れて生成するイオンを分子イオン(M+・)、分子にプロトンが付加したイオンをプロトン付加分子([M+H]+)、分子にナトリウムイオンが付加したイオンをナトリウム付加イオン([M+Na]+)と呼びます。 ここで、“分子構造を保持する”とは、三次元的なコンフォメーションまで含めて保持しているという意味ではなく、“分子内の結合が開裂していない”という意味になります。 分子構造を保持したイオンのイオン種を判定できれば、元の分子の質量を知ることができます。例えば正の分子イオンについては、電子の質量を無視すれば、イオンのm/z値は元の分子の質量に等しくなります。 また、分子構造を保持したイオンとフラグメントイオンとのm/z差(と必要に応じて価数情報)から、分子の部分構造に関する知見を得ることができます。 例えば、分子構造を保持したイオンとフラグメントイオンが両方共1価で、その差が整数値として17や18であれば水酸基、43や44であればアセチル基やプロピル基の存在が考え
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)