質量分析計におけるキャリブレーションの重要性
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは。質量分析屋の高橋です!初回は、質量分析計(MS装置)におけるキャリブレーションの話です。 MS装置のキャリブレーションとは、MSで得られるマススペクトルの横軸(m/z、mはイオンの質量、zは電荷数)を補正する操作です。 正確にはマスキャリブレーション、日本語では質量校正と言います。 MSはイオンを分析する技術であり、マススペクトル上に観測されたイオンのm/z値から元の分子の質量を知ることができるため、測定結果として得られたm/z値が正しいかどうかは、質量分析で最も重要なことです。 つまり、キャリブレーションが正しく実行されたかどうか、あるいは今の装置が正しくキャリブレーションされている状態かどうかを検証することが、質量分析で正しい結果を得るためには極めて重要です。 私達はマススペクトルからイオンのm/z値を知ることができますが、MS装置はイオンのm/z値を計っている訳ではありません。 例えば、飛行時間質量分析計(time of flight mass spectrometer, TOF-MS)ではイオンの飛行時間、四重極質量分析計(quadrupole mass spectrometer, Q-MS)ではイオンが四重極を通過する時の四重極に印加する直流電圧と高周波交流電圧を計っています。 そして、キャリブレーションによって、イオンのm/z値と飛行時間や電圧の紐づけがなされているから、イオンのm/z値を知ることができる訳です。 最近のMS装置はソフトウェアの機能がとても充実していて、キャリブレーションが正しく実行されたかどうかを検証してくれます。 その機能はとても有用で便利なのですが、機能に頼りすぎてしまい自ら検証できる分析者が少なくなっているように思います。 日常の業務でMS装置をお使いの分析者の方は、自分自身の目でその検
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)