MSで得られる質量情報について
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは。質量分析屋の高橋です。二回目の「マススペクトルから何がわかる?」で、“質量分析では分子の質量情報が得られる”と書きました。 “質量分析で得られるのは分子量情報ではないのか?”と思われる方がいると思うので、“分子の質量”と“分子量”の違いについて確認してみたいと思います。 有機化合物を構成する炭素、水素、窒素、酸素などの元素を含め、多くの元素には同位体が存在します。同位体が存在する各元素において、天然存在比が最も大きな同位体を“主同位体”と呼びます。炭素、水素、窒素、酸素については、主同位体はそれぞれ、12C, 1H, 14N, 16Oです。分子を構成する元素の同位体を区別して、分子の質量を計算したものが“分子の質量”です。 例えば、ペプチドの一種であるアンギオテンシン-Ⅰの分子式はC62H89N17O14であり、各元素の主同位体の質量の合計は1295.6775となります。この、主同位体の質量を用いて計算した分子の質量を、モノアイソトピック質量と言います。 分子量は、正確には相対分子質量と言います。 すなわち、分子を構成する各元素について、全ての同位体の質量と天然存在比を加味した平均質量です。上記アンギオテンシン-Ⅰの分子量は、1296.4987となります。 アンギオテンシン-Ⅰを、CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)をマトリックスとした正イオン検出のMALDI-TOFMS(matrix assisted laser desorption ionization time of flight mass spectrometry,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析)で測定したマススペクトルを図1に示します。 アンギオテンシン-Ⅰは、上記の条件で測定するとプロトン付加分子が主として観測
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)