いまさらですが抗ペプチド抗体入門


サイエンス出版部 発行書籍

抗体は、抗原を動物に免疫し一定期間の後に出現する抗体産生細胞(Bリンパ球)を単離して不死化するか、免疫動物の末梢血に分泌された抗体を抗血清として回収して得られます。前者がモノクローナル抗体、そして後者がポリクローナル抗体で、抗血清からアフィニティー精製などによって抗体分子を純化して実験等に使います。   モノクローナル抗体の場合、不死化した培養細胞から均一な抗体が分泌されるので、精製操作は格段に楽になります。免疫動物の免疫系が異物として認識すれば様々な抗原に対する抗体が産生されてきます。たんぱく質に対する抗体を得たいとき、動物に免疫する抗原としては、かつては高度に精製したたんぱく質が望ましいとされましたが、今では先ず遺伝子を取得して組換えたんぱく質を用いることが多くなりました。 また、遺伝子の翻訳産物の配列(ORF, open reading frame)に基づいて抗原とするペプチドを化学合成し免疫原に具する方法もあります。こうやって作られる抗体を抗ペプチド抗体といいます。 抗ペプチド抗体は、名前の通りペプチドに結合しますが、ペプチドの配列が由来するたんぱく質にも同等に結合しなければこれを作る意味がありません。 すなわち、短いペプチドに結合しても本来のたんぱく質には結合しない抗体ができてしまうことがあり、抗ペプチド抗体が嫌われる理由の一つなのです。 たんぱく質にも結合する抗体を手に入れるためには、長めのペプチドを抗原に使うことが一般的ですが、長すぎても良くないこともあり、適度な長さの配列をたんぱく質の構造を勘案しながら適切に分子設定することが重要です。 また、短いペプチドは単独では抗体産生を誘導することができないことが多く、キャリアたんぱく質に結合させて大きな分子サイズにする必要があります。このような煩雑さも抗ペプチド抗体の短所になります。このようなデメリット

大海 忍

このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。

抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任

【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)

KAKEN