抗体・抗血清の保存方法について
サイエンス出版部 発行書籍
目的の抗体をうまく作れたけれど当面の実験には十分すぎるほどの量で、これをどう保存したら良いか、これは贅沢な悩みかもしれません。モノクローナル抗体の場合は、抗体産生細胞を凍結保存して液体窒素下に保存すれば、必要なときに細胞を起こして抗体を得られます。 液体窒素での保存は、複数の保存庫にサンプルを分散させるなど最低限の危機管理をしておきます。クローン化した細胞から抗体の遺伝子を単離して保存すればなお良いでしょうが、軽鎖と重鎖のサブユニットをうまく発現させるシステムに遺伝子を載せるのはなかなか大変かもしれません。 ここでは、たんぱく質分子としての抗体をどう保存するかについて説明しましょう。ポリクローナル抗体を作ったときは、免疫した動物から末梢血を採取し、抗血清を分離・回収します。そして一部をアフィニティーカラムにかけて目的の抗体を単離します。 抗体の使用目的やアフィニティーカラムの大きさにもよりますが、この方法でかなりの量の抗体が精製できます。抗体を利用する実験が数ヶ月以内のものであるならば、冷蔵保存が良いです。 しかし、実験で抗体を希釈した場合は使い切ってしまうことを勧めます。一連の実験で使用する抗体量を見積もり、残りは凍結保存で構いません。-80℃など超低温槽が望ましいですが、凍結融解が絶対に起こらない-30℃程度のフリーザーでも大丈夫です。 精製した抗体の濃度が極端に低い(1μ グラム/mL 以下) ときは、濃縮するか血清アルブミンなどを添加して全たんぱく質濃度を高めておくのがよろしいです。 ただし、抗体の実験条件によっては他のたんぱく質を入れたくなかったりバッファーが限定されたりするので注意が必要です。一度アフィニティー精製した抗体は、このように冷蔵あるいは冷凍保存しますが、何れにしても近い将来に再度使用することが前提となります。 また、モノクローナル
ラット・マウスのモノクローナル抗体精製に最適な高性能プロテインA アガロースビーズ Ab-Capcher
ヒト・マウス・ラットのモノクローナル抗体精製に便利な磁気ビーズ Ab-Capcher Mag
4600万以上の化合物から検索して購入/オリジナルライブラリーの構築に:AMBINTER 化合物データベース
著者: 大海 忍
このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。
抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
全文を読むにはログインしてください。(登録無料)
大海先生への質問も各ページのコメント欄から投稿できます。
【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任
【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)