イムノブロットあれこれ、その 1、大量に電気泳動すればいいってもんじゃない


サイエンス出版部 発行書籍

電気泳動で分離した生体高分子をニトロセルロース、ナイロン、テフロンなどを担体とする膜に転写することをブロッティングと呼びますが、たんぱく質の転写にはウエスタンブロッティングという通称があります。たんぱく質の電気泳動は、ポリアクリルアミドを支持体とするゲルでおこなうことが多く、転写も電気的に移すエレクトロブロッティングになります。   たんぱく質用のブロッティング膜としては、昔はニトロセルロース膜が使われましたが、いまは強度や吸着量に優れた、テプロン系の PVDF(ポリビニリデンジフルオリド) 膜が主流です。そして、たんぱく質をブロッティングした膜に抗体をかけて、特定の抗原を抗体で染める技術がイムノブロッティングというわけです。 たんぱく質の電気泳動には、ドデシル硫酸ナトリウムを含む SDS-PAGE が手軽なので多用されます。SDS-PAGE は、たんぱく質分子をポリペプチド鎖の長さとおおよそ相関した移動度で分離します。 すなわち、長鎖のポリペプチドは遅く移動し、短い分子はゲルの先端近くへ早く動いていきます。このように分子サイズにしたがって分離した泳動パターンがそのまま膜に転写されるので、抗体の評価をおこなうにもイムノブロッティングはいたって便利なわけです。 SDS-PAGE を終えたポリアクリルアミドゲルは、転写する前にブロッティングバッファーで平衡化します。ブロッティングバッファーの組成は、SDS-PAGE の泳動バッファーとほぼ同じ Tris-グリシン(pH は8.2前後)を基本にして、これに SDS とメタノールを含みます。SDS はブロッティング装置の種類によって省いたりしますが、多くのラボで最近使われているセミドライタイプのブロッティング装置では0.1%(w/v)前後のの SDS を加えることが普通です。メタノールの濃度も可変ですが、標準は20%(v/

大海 忍

このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。

抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

全文を読むにはログインしてください。(登録無料)
大海先生への質問も各ページのコメント欄から投稿できます。

【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任

【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)

KAKEN