未来の薬剤耐性菌を予測せよ!土壌ゲノムから「長く効く抗生物質」を設計する新戦略

未来の薬剤耐性菌を予測せよ!土壌ゲノムから「長く効く抗生物質」を設計する新戦略

効くはずの薬が効かない―。薬剤耐性菌の脅威は、静かに、しかし確実に私たちの未来を蝕んでいます。毎年500万人が命を落とすこの戦いで、人類は後手に回りがちでした。しかし、もし未来に出現する「敵」を先読みし、それを無力化する武器をあらかじめ開発できるとしたら?最新の研究が、土の中に眠る膨大な遺伝子情報から未来の脅威を予測し、より長く効き続ける抗生物質を設計する画期的な方法を提案しています。 多剤耐性菌により、毎年500万人が死亡しており、科学者が治療法を開発するよりも速いペースで新たな耐性菌が出現しています。今回、研究者たちは、臨床現場で出現する前に環境中にすでに存在する薬剤耐性遺伝子を特定し、その情報を耐性を回避する抗生物質の設計に直接結びつけるプラットフォームを開発しました。2025年5月19日に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたこの発見は、いわゆる「レジストーム(薬剤耐性遺伝子の総体)」のメタゲノム調査を早期警戒システムとして利用し、将来問題となる可能性のある耐性について科学者に警告するものです。この情報をもとに、開発中の抗生物質を積極的に最適化し、微生物という敵に対してより強靭なものにすることができます。このPNAS論文のタイトルは「Environmental Resistome–Guided Development of Resistance-Tolerant Antibiotics(環境レジストームに導かれた耐性克服型抗生物質の開発)」です。 「私たちは、将来問題となりそうな耐性の種類を予測しているのです」と、ロックフェラー大学のショーン・F・ブレイディ氏(Sean F. Brady)の研究室に所属する筆頭著者のジェームズ・ピーク氏(James Peek)は言います。「私たちのプラットフォームが、抗生物質の臨床的寿命を延ばす一助となることを願

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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